◆一風変わった言語学の本が売れている。川添愛さんの『言語学バーリ・トゥード: Round 1  AIは「絶対に押すなよ」を理解できるか』(東京大学出版会)である。川添さんは最近までユーミンの「恋人がサンタクロース」を、「恋人“は”サンタクロース」だと思い込んでいた。なぜ、恋人“は”、ではなく、恋人“が”なのか。この本を読むと腹落ちする。

◆「恋人がサンタクロース」は【新潮流】第141回「クリスマスイブ」で取り上げた。サンタクロースを信じるのは子供で、大人はサンタがいないことを知っている。それが、この歌の中では逆転しているところがミソだと書いた。しかし、子供だってサンタの存在を信じてはいないだろう。ユーミンの「恋人がサンタクロース」は1980年の曲。当時から「それは絵本だけのお話」と子供が言っている。SNS等で情報が氾濫する今どきの子供はなおさらサンタクロースがいないことを知っている。

◆いや、子供だってサンタを信じないのはもっと昔からだ。120年以上も昔の1897年、友達から「サンタクロースなんていない」と言われた8歳の少女、バージニアは新聞に「サンタさんはいますか?」と質問を送る。その新聞社、『ザ・サン』の論説委員だったフランシス・P・チャーチは少女の質問に社説で回答した。「バージニア、サンタクロースはいますよ」と。この世の中に愛や思いやりや、いたわりがあるのと同じようにサンタクロースはちゃんといるのだと。

◆ここで、大切なものは目に見えない ‐ 今はデータやデジタル資産など無形資産で稼ぐ時代だ、などと論を展開するのは無粋というものだろう。1年のうち、ホリデーシーズンくらいは、きれいな心を大事にしたい。「いちばんたいせつなことは、目に見えない」。サン=テグジュペリ『星の王子様』の台詞である。

◆今週末はクリスマス。例年であれば、クリスマス休暇に入る外国人投資家に代わって個人投資家の動きが活発になる時期である。過去の経験則では年末にかけての相場は個人主導で上昇することが多い。いわゆる「サンタクロース・ラリー」だ。ところが今年は東証マザーズの低迷で痛手を負って個人投資家は年末相場の主役になれないのでは?と懸念する声もある。今年の営業日も残り10日を切った。さあ、果たして株式相場にサンタクロースは来るだろうか。サンタクロース(ラリー)を信じますか?