前回指摘しました、中国国家統計局が4月1日に発表した製造業購買担当者指数(PMI)は予想外に53.1と2月の51.0から上昇し、4ヶ月連続の改善、1年振りの高水準となりました。景況感の境目となる50を割り込んで5ヶ月連続で経済減速を示しているHSBC発表のPMIとはかなり異なる結果という印象です。もちろん、本来であれば、PMIが改善していると言うことは経済状況が良くなりつつあることを意味しますので、現在の中国経済の減速懸念を払拭できる良いものと評価できます。しかし同時に、中国国家統計局発表のPMIが改善をしているということは、期待されている金融緩和が遠のいたことを意味しますので、現在の株式市場ではマイナスに働く可能性があります。

現状の中国企業業績はHSBCのPMIが示すように悪化方向に向かっているのは間違いないと思います。3月28日に国家統計局が発表した1~2月の工業企業の業績は5.2%の減益となっています。2011年は25.4%の増益でしたから急ブレーキがかかっている印象です。本来なら金融緩和で経済を加速すべきタイミングであるのに、政府発表のPMIが改善を示しているし、3月の全人代では政府が景気刺激策に消極的であることが伝わってきました。これは思い切った景気刺激策を実施すると副作用でインフレなどを産むことを中国政府が予想以上に強く警戒していることを示唆しています。

しかし、そうはいっても経済が減速する中では必ず金融緩和に動く必要が出てきます。たとえば、人民元建ての中国の金融機関の新規貸し出しは1~2月で1兆4500億元に留まりましたが、市場が期待していた1兆8000億元を大きく下回る金額で、3月も8000億元程度で第1四半期の合計は前年並みと見られています。これはそもそも企業の資金需要が減退していることが原因と思われます。しかし、中国政府は新規融資の年間目標を7%増の8兆元、マネーサプライの伸び率目標を14%増(2011年は13.6%増)としています。このままいけば目標を達成できませんから、いずれ金融緩和や景気刺激策を打ち出してくることは明白で、あとはそのタイミングだけということになると思います。次の大きなキッカケになりうるのは4月9日に発表予定の消費者物価指数です。2月は前年同期比3.2%増と低く留まりましたが、これは旧正月要因と見られている上、3月20日からのガソリン価格の引き上げもあり、3月は上昇すると予想されています。しかし、これが低く収まってくれば、金融緩和期待が一気に膨らんでくると思われます。

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