基本的な債券の説明はこちら> 「第144回 債券は難しい?」
http://lounge.monex.co.jp/column/money/2009/07/13.html
債券は預貯金より一般に利率もよく、保有することで定期的な「フィクストインカム」(確定収入)確保することができますし、さまざまな種類のある商品です。
ただ、発行されるタイミング、償還・利払いの時期などが決まっていますので、「こんな債券がほしい」と思ったときが新規に発行される債券(新発債)の募集中とは限りません。
いつでも欲しいタイプの債券を物色できることは債券を資産に組み入れるときに大変に便利で、それが「既発債」です。
既発債というのは、その字が表す通り、既に発行されている債券です。債券は償還日時や利率等、すべて発行時に決まっていますから、現在のように世界の金利水準がかなりの低い時期であっても、以前(発行時に市中金利が高かったとき)に発行された債券には現在よりも高い利率がついているものがあります。そう書くと、既発債で発行体の信用度も高く、高い利率であれば、大変有利な商品に聞こえるかもしれませんね。
でも金融商品にはそんなに簡単な「旨い話」はないことを思い出してください。債券の価格は市中の金利の応じて決まり、高い利率の債券は価格が高く、低い利率の債券は価格が安くなります。
原則的に、新発債であれば100で買ったものが償還時には100で戻ってきます。既発債の場合、そのときの市中金利に応じて100で発行された債券が80だったり、120だったりの価格で購入することになります。(償還時には100です)
それだけに既発債を検討するときに大切なのは、「利率(表面利率)」、ではなく実際の「利回り」です。それはどれだけの期間、その債券を保有するかによって変わります。下記の二つの計算式を参考にしてください。
最終利回り...既発債を時価で購入、満期まで保有した時の利回り(%)[表面利率+{額面(100)-買付価格}/残存年数]/買付価格×100
所有期間利回り...既発債を時価で購入、満期前に途中売却した場合の利回り(%)
[表面利率+{売付価格-買付価格}/所有期間]/買付価格×100
もう一つ、既発債にはなじみにくい言葉に「経過利息」というものがあります。既発債を購入するとき、当然のことながらそのタイミングは利払い時と重なるとは限りません。
保有している期間分の利金を日割りで調整するというのが「経過利息」なのです。購入者は保有していなかった時期の利金も次回の利払い日に受け取ることになりますので、購入時に前回の利払い時から購入時までの分を支払うのです。既発債の仕組みを理解して活用することで、これまで以上に債券をポートフォリオに組み入れ易くなるのではないでしょうか。
廣澤 知子
ファイナンシャル・プランナー
CFPR、(社)日本証券アナリスト協会検定会員