HSBCが3月22日に発表した中国の製造業購買担当者景気指数(PMI)の3月度の速報値は48.1で前月比-1.5ポイントとなり、5カ月連続で経済減速を示しています。ちなみに、中国政府公式発表の3月分データは4月1日に発表予定です。PMIは株価との連動性が高いものです。もしHSBCの発表数字と同じように、公式発表でも3月が下落となるのであれば、3月に入ってから調整局面に入っている上海総合指数は、すでにそれを先に織り込んでいることになります。ともあれ、4月1日に政府の公式発表の3月の数字が景況感の境目である50を上回るか下回るかは景気判断の面で重要な意味を持ってきますので、要注目です。

それ以外の経済統計を見てみても、輸出は今年に入って下落傾向を強めており、前回指摘したように2月は過去10年で最大の貿易赤字となりました。物価は順調に下がってきていますが、原油価格が不気味に上昇してきており、中国では3月19日にガソリン、ディーゼルオイルについて1トンあたり600元の値上げが発表されました。その一方で、物価の下がるサイクルでは経済が過熱していないことになるので、小売売上の伸びや鉱工業生産が落ちてきています。その結果、3月の人民元新規貸出純増額は予想を下回る約8000億元になる見込みのようです。これは景気が落ち込んできているために、借り入れの需要が減ってきていることを意味しています。

しかしこれらの一連の事象も、経済サイクルとしてソフトランディングへ向かっているものであれば問題ないと思います。昨年から中国経済はGDP成長率と物価、金利が揃って下がる調整サイクルにあり、ここをソフトランディングできれば上出来だと思います。欧州崩壊や中国不動産バブル崩壊など、何らかのショックでハードランディングを避けることさえできれば、2012年後半に向かって株価は上昇していけると思います。中国株は世界の株式市場に比べ、PERの面から見ても割安な状態で放置されていますが、これは中国経済がハードランディングする可能性を危惧してのものだと思います。ソフトランディングできれば自ずとこの割安感は解消されるはずです。世界は2008年の百年に一度の危機を体験したばかりであり、危機に対して身構えてもいます。このような時に危機は暴発しないものであり、2007年のような絶好調時のノーガード状態の時にこそ危機は起こります。その点から考えてもハードランディングの可能性は低いと思います。

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