日本の高齢化率(65歳以上の人口の割合)は、内閣府高齢社会白書によると2020年に28.8%となりました。日本国民の約3割が高齢者ということです。そんな超高齢化社会の日本において「終活」を口にすると、「縁起でもない」と言われることが多く、最近までほとんど知る術がありませんでした。終活は大事なことですが、学校などで学ぶ機会がないのです。そのため、終活を始めようと思っても、進め方や費用、選択肢がわからず、「自分は何をすれば良いのか」と悩んでしまう方々が多いのが現状です。

そこで本連載では終活の具体的な始め方や必要な考え方などを解説していく予定です。まず第1回目は、終活を始めるにあたって必要なポイントをお伝えします。

終活とは、100歳まで楽しく生きるための「生き支度」

終活と聞くと「死ぬ準備」と思われがちです。しかし、終活そのものではなく、「何のために終活するのか」という目的が重要です。

「人生100年時代」とよく言われますが、100歳まで生きる準備をしている人はあまりいないでしょう。なぜなら自分が100歳まで生きると思っていないからです。しかし、実際には日本に100歳以上の方は8万人以上います。100歳の双子の姉妹、金さん・銀さんが一躍有名になった約30年前は4千人程度でした。30年間で100歳以上の人口が20倍になったということです。現在、日本では70代の人口が多く、その方々が100歳になる30年後には100歳以上が54万人ほどになるとも予測されており、否応なしに100歳まで生きる時代が来ていることが感じられます。

しかし残念ながら、この長生きを両手あげて喜ぶ方は少ないようです。それはなぜでしょうか。日本において「長生きはリスクだ」と思っている方が多いからです。「寝たきりになるのではないか」、「お金は足りるのか」、「子供たちに負担がかかるのではないか」という不安の声も聞かれます。しかし、せっかく長生きするのであれば、楽しく過ごしたいと思いませんか。実は、終活こそが、100歳まで楽しく生きるコツである「生き支度」なのです。終活は人生の終焉を考えることを通じて自分自身を見つめ直し、今をより良く自分らしく生きる一助けになるからです。

終活はいつからはじめるべき?

終活は「生き支度」だと考えると、始めるタイミングは早いに越したことはありません。「自分が100歳の時、どんな人生でありたいか」、「海外でのんびり住みたい」、「家族と仲良く楽しい生活をしたい」など、何となくでも良いので想像してみてください。

例えば、海外でのんびり住むとしたら、どのようなことが必要でしょうか。英語を話せるようになっておく、仕事をしなくても生活できるように貯蓄しておくなど、今のうちから何をしておくべきかが見えてくると思います。

このように「自分の人生をどう生きるか」ということを想像して、具体的にやるべきことを考えることには、後々お葬式やお墓のことも含まれてくるでしょう。なぜなら、これらは自分の人生の延長線上にあるからです。

70代の方から相談を受けて、お葬式についての希望などを聞いていると、お話がとても具体的な内容におよびます。しかし20代の方とお葬式の話になると、死生観や自分の考えなど漠然とした内容です。若い世代にとって死は「まだ先にあるもの」ですので、「自分の生き方を考えて、将来どうしたいのか」という視点なのでしょう。若いうちは広い視野で自分の人生について考え、その上で必要なことへの準備期間を長く持てます。そう考えると、終活は早くから始める方が良いと言えるのではないでしょうか。

あまり考えたくないことですが、自分がいつ「病気」になるか分かりません。私の母が癌になった時も、突然のことでした。検査結果を聞くため診察室に呼ばれ、医者に「癌です」と告げられた瞬間、母は癌患者になってしまいました。そうなると家族の会話も変わります。母が銀行に預けているお金についても聞けませんし、お葬式のことなど口が裂けても言えませんでした。元気でしっかりと家族と話し合える時期が終活の始め時です。「終活なんて、まだ早い」と思っている時が終活適齢期なのです。

時代とともに多様化する終活スタイル

終活においては、どうしても「費用」がつきものです。その費用も時代によって変わってきました。例えばお葬式の費用(お葬式本体+飲食+寺院への支払いなど)は10年前には平均で230万円ほどでした。それが今では家族葬などの場合ですと、全国平均が100万円を切っています。

地域や寺によって費用も当然異なりますし、形も年々変わってきています。お墓も以前は石塔の「◯◯家の墓」という家族墓が主流でしたが、昨今は小規模小区画のものも増えており、100万円しないものもあります。ビル型の納骨堂や散骨など新しい供養の形も見られるようになり、自分に合ったものを選べるようになりました。それはメリットでもありますが、選択肢が増えたことで「ピンキリ」の幅が広がったとも言えるでしょう。

選択肢が多い今の時代だからこそ、様々な情報を知って、自分に本当に合ったものを考えることが大切です。本連載では今後、数回にわたって「財産整理、老後の資金」、「老後に向けての生命保険の見直し」、「お葬式や墓のこと」、「人間関係などの暮らし方」について解説していきます。ぜひ、ご自身に合ったもの見つけ、自分らしく生きる終活の参考にしていただければと思います。