私はお葬式についての相談を受けることも多いのですが、その際たいてい「お葬式には、いくらかかるのですか」と聞かれます。「お葬式に関する全国調査2020年」によると、お葬式費用の全国平均は約208万円とのこと。これは「お葬式(葬儀)本体」「飲食」「寺院の費用」「返礼品や香典返し」の合計です。

お葬式費用は、お住まいの地域やお寺などによって、大きく異なりますので、全国平均の金額に合わせて準備する必要はありません。とは言え、お葬式には自動車を買うぐらいの金額がかかる場合が多いというのが現実です。車を買う場合には、まず街などで見かけたりコマーシャルなどで「この車いいな」と興味を持つところから始まり、その後ネットやパンフレットで調べたり、試乗して検討・交渉するなど、購入まで時間をかけてじっくりと考えるでしょう。しかし、お葬式の場合は事前に準備をしておかないと、ともすれば30分で決めなければいけない事態になりかねません。

そこで今回は、お葬式など事前に準備するにあたり確認しておきたい3つのポイントをお伝えします。

お葬式の見積もりをとっておく-葬儀社の見積もりのとり方と注意点-

自分のお葬式の見積もりをとるのには、なかなか勇気がいるかもしれません。しかし、たいていの葬儀社は、全く元気な方に対しても気持ちよく見積もりを出してくれます。(逆に不親切なところはこの時点で候補から外した方が良いでしょう)。見積書に記載されている葬儀費用の詳細について調べるのも良いですが、お勧めなのは葬儀社2社以上から見積もりをとって比較することです。

見積書を確認する上で気をつけたいポイントは以下の3つです。

(1)見積書と実際の費用に差が出ることを記載しているか、もしくは説明があるか

お葬式は結婚式と違って、何人来るのか事前に把握することが困難です。そのため、見積書には金額が変動する項目があるのです。例えば飲食や返礼品、会葬礼状(来てくださった方へのお礼状)などにかかる費用です。お葬式後の不満の1つに「見積書と実際の請求金額が随分と違った」ということがあります。それは見積書の中で、変動する可能性についてしっかりと説明されていないことから起こります。見積書では、どの項目が、どの程度変動する可能性があるのかを確認しておきましょう。

(2)素人でもわかりやすい言葉で記載されているか

「死後の話は縁起でもない」というイメージをお持ちの方も多いでしょうし、日常でお葬式用語を見たり聞いたりすることもないでしょう。そのため、見積書には馴染みのない言葉が並んで分かりにくい場合も多いです。そのような中で、素人が見ても理解できる言葉で見積書を作成している葬儀社はお客さんの目線を大事にしている会社と言えるのではないでしょうか。

(3)費用は葬儀の種類によって決まるわけではない

「家族葬」と聞くと「安い」イメージがあるかもしれません。しかし実際には、「一般葬(いわゆる普通のお葬式)」「直葬(儀式をせず火葬するお葬式)」「家族葬」など、葬儀の種類によって費用が決まるものではありません。お葬式は「何に対して、どのくらい使ったか」によって金額が決まるのです。

例えば、以下のような項目をそれぞれ選択し、その金額が加算されていくイメージです。

・どの斎場で行うのか:広さや場所、設備などを選択

・祭壇はどうするのか:既に設置しているものに飾りを付けるのか、生花祭壇にするのか、白木祭壇にするのかなどを選択

・死装束や棺:幅広い値段・種類から選択

その他、人件費や食事代なども加算されます。ですので、葬儀の種類によるイメージで選ぶのではなく、複数社から見積もりをとって各項目の費用を確認するようにしましょう。

病気になってからですと、自分のお葬式の見積もりをとる心の余裕を持つのも大変でしょう。元気なうちに準備をしておきたいところです。

話しやすい担当者のいる葬儀社を選ぶ

葬儀社は、会社の規模が大きい=良い会社というわけではありません。葬儀社全体の7割は30人未満の会社です。ですので、規模は小さくて普通と言えるでしょう。私は葬儀社を選ぶ上で大事なのは、会社の姿勢と「担当者」だと思います。葬儀は自分がいなくなってから行われることなので、自分との相性だけでなく、誰に対しても「親身になって話を聴いてくれる」担当者を選ぶことが大切です。また、“わからない”部分をしっかりと受け止めてフォローする姿勢があるかどうかも確認しておきましょう。

遺体の搬送先を決めておく

亡くなって一番先に起きる問題は、「遺体をどこに搬送するか」です。昔は自宅で最期を迎える方が多かったのですが、今は約75%の方が病院で最期を迎えています。

例えば、3年前に私の父が病院で亡くなったのですが、「ご臨終です」と告げられてすぐ、「今見ての通り病院が改装中で遺体を置く場所がありません。申し訳ないのですが45分間でどこかに搬送できますか」と聞かれました。そして「搬送先がない場合は、葬儀社を紹介します」とのことでした。紹介される葬儀社が悪いというわけではありません。ただ、自分の意図しないうちに物事が進んでしまう可能性が大きいことに違和感を抱きました。私は仕事柄、地域の葬儀社を知っていて直接連絡できたので事なきを得たのですが、この短時間内に搬送先を用意できる方がどれだけいらっしゃるか…と考えました。

そういった経験からも、遺体の搬送先を事前に決めておくことをお勧めします。

選択肢としては、
・自宅
・葬儀社の安置施設のある場所
・火葬場で安置施設のある場所

搬送先を決めておくだけでも、慌てず手配を進められるでしょう。事前に検討しておくと無駄な費用も節約できると思います。

今回のコラムではお葬式に関わる話をしましたが、皆さんお一人おひとりお葬式に込めたい思いをお持ちではないでしょうか。その思いを見出した上で、判断することが正しい選択や後悔しないことにつながると思います。

私は15年前に母を亡くした時、亡骸のそばにずっといたら「死んだらこうなるのだから、頑張って生きなさいよ」と言われている気がしました。私にとってお葬式は亡くなった人の最後の願いを聞く場だと思っています。私自身は高いお葬式ではなく「良いお葬式」をしたいと考えています。