>> >>特別インタビュー【2】テスラ株(TSLA)の将来性、長期投資先として有望な銘柄は?

注目している小型株は?

岡元:今、注目している小型株を教えていただけますか。

トーマス氏:小型株については、通常、50億ドル以下と定義されていますが、私たちの投資対象のほとんどは、それ以上あるいは100億ドル超のレンジです。その理由の1つは、小型株は流動性が低いため、投資対象になりにくいからです。

しかし、私たちは、マグナイト(MGNI)やクリテオ(CRTO)(※)のような広告業界の小規模企業にも投資しています。これらの企業はオンライン広告費、特にコネクテッドTV向けの広告費で大きな変化を遂げています。

クリテオはアマゾン(AMZN)が先駆者となっているリテールメディア広告(ECサイトで商品を検索した際に表示される広告)も手がけています。商品を販売するだけでなく、他の方法でトラフィックを収益化するという考え方が主流になってきており、クリテオはその役割を担っています。

5GがAIの進化にもたらす影響

岡元:5GはAIの進化を変えるでしょうか。

トーマス氏:5Gは非常に重要な基礎技術です。5Gはより多くのデバイスとの接続を可能にし、アルゴリズムシステムに供給される膨大な情報を収集できます。しかし、結局のところ、インテリジェンスはインフラのあらゆる要素に織り込まれていなければなりません。

例えば自動車のように高速で移動するものの場合、時速50マイルで走行中、中央のサーバーに情報を送信して応答を得るという方法では、光通信速度の限界に直面します。このような判断はネットワークでの遅延が大きすぎるため、車の中で行わなければなりません。ですから5Gは、AIの導入を加速するための重要な基礎技術なのです。私たちはAIや情報はインフラのすべての層に織り込まれなければならないと考えています。

AI関連企業のIPOの見通し

岡元:今後、AI技術に関連する企業の上場は増えると思いますか。 

トーマス氏:AIの分野では、10億ドル以上の企業価値がある未上場企業が数多くあります。その多くは、有用なAIシステムを作るために管理しなければならない膨大なデータ量に対応できるよう、データインフラなどを扱っています。また、農業関連や製造業関連の問題など、特定の分野に特化したものもあります。

これらの企業の多くが株式公開前に他の上場企業に買収されるのを見てきました。中には急速に成長している企業もあり、未上場企業として大きな価値を持っています。

最近、エアビーアンドビー(ABNB)やドアダッシュ(DASH)など、多くの企業が上場しました。他の産業にも上場が広がっていくことを期待しています。 

個人投資家には長期的な視点が必要

岡元:良い投資家になるためのアドバイスをお願いします。 

トーマス氏:私は、長期的な視点が必要だと考えています。自分の周りを観察し、世界がどのように変化しているか、長期的に持続可能なトレンドは何かを考え、世界の真の問題を解決している企業を見極める必要があります。それが出発点です。 

実は私の息子が投資の授業を受けています。私が在宅勤務をするようになってから興味を持ったようです。彼は私がやっていることをたくさん見るようになりました。彼はまだ8歳ですが、株式市場について学びたいと言っています。

岡元:それは学校のカリキュラムの一環ですか。

トーマス氏:いいえ、学校のカリキュラムには含まれていません。夏休みの間だけの夏期講習です。 彼がちょうど投資について学びたいと思っていたタイミングでクラスが開講されたのです。これは子どもたちが株式市場に触れるためのものです。バーチャルの資金を使って投資をするゲームをしていました。 

投資家が直面する最大の課題の1つは、毎日株式市場を見ている時に、感情に流されないようにするのが難しいということです。つい儲かったか、損したかが気になるでしょう。

しかし、このような短期的な視点での判断は、感情的な判断を招き、長期的な成果を損なう可能性があります。個人投資家の皆さんには、より長期的な視点を持ち、日々起こりうる乱気流に惑わされないよう気をつけていただきたいと思います。

株式市場の歴史を振り返ってみると、ここでは真の価値創造があり、株式市場、特に米国での長期的な期待リターンは非常に魅力的です。世界の市場を見ても、長期的に見れば同様です。

岡元:御社のファンドを既に保有している方や、御社のファンド投資に興味のある日本の方に伝えたいことはありますか。

トーマス氏:これまでサポートしてくださっている方々に大変感謝しています。皆さんに代わって大事な資産を管理させていただけるのは大変光栄なことです。 私たちに託された信頼を真摯に受け止め、その信頼に応えるべくチームと共に日々努力しています。

今、私たちは、これまでに遭遇したことのない最も大規模なイノベーションサイクルの真只中にいて、あらゆる業界が変わる可能性を秘めていると考えています。境界線を再定義する可能性があります。つまり、現在定義されているいくつかの産業の概念は、今後10年から15年の間に完全に書き換えられるでしょう。 

そんな中、私たちはAIが最も魅力的な長期投資先の1つであると信じています。皆さんにもAIへの投資に興味を持ち、継続してくださると嬉しく思います。

10年後の米国株式市場を見る上で大事なポイント

岡元:今後10年間の米国の株式市場について、どのように考えていますか。「かなり自信がある」ですか、それとも「自信がある」ですか。

トーマス氏:今後10年間であれば「かなり自信がある」ですね。しかし、私が言いたいのは、企業によって10年後の結果はより大きな差がついているでしょう。どんな企業もAIアプリケーションを購入するだけでAI企業になれるかというと、そうではありません。 

多くの企業にとって、企業文化を変える必要があります。多くの企業が企業文化の改革に取り組んでおり、80%の企業で役員レベルの議論になっています。しかし、すべての取り組みが成功するわけではありません。失敗を乗り越えて学び、適応していくには非常に高いレベルのコミットメントが必要です。

ですから、10年後の米国の株式市場はかなり魅力的なものになると確信していますが、そのようなリターンをもたらす企業構成がどのようなものになるかと答えるのは簡単ではありません。

S&P500に関して言えば、現在の上位10社はテクノロジー関連企業ですが、10年前、20年前には全く違っていました。この変化のスピードに対応するのは、本当に大変なことです。 

岡元:そうですね。将来的に、テクノロジーセクターの時価総額のウェイトは高くなると思いますか。

トーマス氏:これは非常に興味深い質問ですね。なぜならS&P500の中でテクノロジーセクターは完全に再定義されましたので。今やアマゾンは小売業で、テスラは自動車会社です。ネットフリックスはメディア企業です。グーグルやフェイスブックもメディア企業です。これは、企業がどこにフィットしているかという非常にダイナミックな評価です。

今後も多くの変化があるでしょう。だからこそ、私たちはAIについて幅広い定義をしているのです。アナリストとしてIT企業を分析していた頃、「アマゾンは小売業なのかテクノロジー企業なのか。ネットフリックスはメディア企業なのか、それともテクノロジー企業なのか。」などとよく聞かれました。

現代社会で競争するためには、テクノロジーを駆使する必要があるため、どの企業もこのような質問を受けることになります。これは回答が難しい質問で、マイクロソフトとアップルという狭義のテクノロジー分野に限って話しているのであれば、この2社がテクノロジーセクターの大部分を占めることになるでしょう。

しかしこれも変化していきます。他にも新しい企業が出てきています。ロク(ROKU)のような企業がS&P500に採用されることになったら、おそらくメディア部門になるでしょう。つまり、どの企業もテクノロジーに対応していくというのが答えです。

S&P500の中でどのように定義されるかは、よりダイナミックなものになるでしょう。 

岡元:確かに興味深いですね。大変勉強になりました。本日はどうもありがとうございました。

トーマス氏:こちらこそ本当にありがとうございました。

※マネックス証券では、クリテオ(CRTO)の取扱いはしておりません。