最大下落率は1割以上に拡大

南アフリカンド/円は、2020年の「コロナ・ショック」での急落が一段落した後から2021年にかけて4割以上も上昇、最も大きく上昇した、いわば「コロナ後最強通貨」の1つだった。ただ最近にかけては下落が広がっている。年初来の高値からの最大下落率は、1割以上となってきた(図表1参照)。

【図表1】南アフリカランド/円の推移 (2020年1月~)
出所:リフィニティブ社データをもとにマネックス証券が作成

このように下落が広がるきっかけとなったのは、7月以降、前大統領の収監への抗議活動が暴徒化するなど国内混乱の拡大だった。ただより本質的に重要だったのは、すでに中長期的な高値警戒域に達していたことから、売られるリスクが高くなっていたということではないか。

少なくとも2010年以降で見る限り、南アフリカランド/円は5年MA(移動平均線)が上限になってきた(図表2参照)。その5年MAは、足元だと7.5円程度。つまり、一時8円を大きく上回るまで上昇した南アフリカランド/円は、経験的には「上がり過ぎ」懸念がかなり強くなっていたと言えそうだったわけだ。

【図表2】南アフリカランド/円と5年MA (2010年~)
出所:リフィニティブ社データをもとにマネックス証券が作成

2010年以降の南アフリカランド/円について5年MAからのかい離率で見ると、5年MAが上限、それを3割近く下回った水準を下限とした範囲中心の推移が基本的に続いてきたことがわかる(図表3参照)。これで見ると、最近にかけての続落を受けてなお、中長期的には「上がり過ぎ」懸念が強い水準で推移しているといえそうだ。

【図表3】南アフリカランド/円の5年MAからのかい離率 (2010年~)
出所:リフィニティブ社データをもとにマネックス証券が作成

このように、南アフリカランド/円が中長期的な高値警戒圏まで上昇したのは、「コロナ後」の世界的な株高、リスクオン局面において、基本的にリスク資産と位置付けられる新興国通貨が選好されたということがあるだろう。加えて世界的な金産出国である南アフリカだけに、一時最高値を更新、2000米ドル前後まで金相場が上昇したことも、南アフリカランドが買われる要因になったと考えられる。

ただそんな金相場は、最近にかけては大きく下落に転じた。そういったことが、中長期的に「上がり過ぎ」圏にある南アフリカランドにとっては、一転して売り材料になった可能性がありそうだ。

南アフリカランド/円の90日MAからのかい離率は、最近にかけての下落を受けて、マイナス4%以上に拡大してきた(図表4参照)。ただ、南アフリカランド/円が大きく下落する局面では、同かい離率はマイナス10%以上に拡大することも少なくなかった。

【図表4】南アフリカランド/円の90日MAからのかい離率 (2010年~)
出所:リフィニティブ社データをもとにマネックス証券が作成

足元の90日MAは7.7円程度なので、それを今後1割以上下回る動きに向かうなら、7円を割れる計算になる。つまり、当面において7円割れとなると、短期的な「下がり過ぎ」懸念が高くなってくるものの、逆にいえばそこまでは続落するリスクがくすぶり続ける可能性がありそうだ。