2月9日に中国国家統計局が中国の1月の消費者物価指数(CPI)を発表しました。結果は4.5%上昇と、2011年12月の実績値である4.1%や市場平均予想の4.0%を上回りましたのでネガティブサプライズになりました。CPIが予想よりも下がらないことで、金融緩和が遅れるとの見方もありますが、今回は特に心配ないと思われます。というのも、2011年の旧正月の元旦は2月10日だったのに対し、2012年の旧正月の元旦は1月23日であったためです。旧正月は消費が旺盛になるため、一年で最も物価が高くなりやすい時期です。その時期が20日ほどずれた訳ですから、ある意味で今回の結果は当然とも言えると思います。また、今年は中国南部の天候不順により食料品価格が上昇したこともありますが、こちらも一時的な要因です。

そしてその一方で、今年も旧正月の連休中の消費は拡大しました。中国商務部のデータによると、2012年1月22日(旧正月大晦日)から1月29日の主要小売企業の販売総額は前年同期比16.2%増の4700億元となったとのことです。製品別に見ると、服装、金・宝飾品、食品の売上はそれぞれ18.7%増、16.4%増、16.2%増となっています。特に金の販売が好調です。中国では一般的に、記念品やお祝い事の贈り物として金が購入されます。北京の金販売で最も有名な菜市口百貨店での売上は57.6%増となっており、天津、上海の主要金販売店の売上も約6割増です。 反面、厳しいセクターもあります。特に家電、自動車、不動産の販売が低迷しています。家電、自動車の消費刺激策が昨年末に終了したことで、消費者は新しい優遇策の発表を待っており、買い控えが起こった模様です。また、不動産市場向けの引き締め政策が続いており、住宅価格は今後値下がりする可能性があります。そのため、様子見をする消費者が増え、不動産取引量が減少しています。しかし、厳しいセクターはあったものの、全体的に見れば旧正月の消費動向は拡大し、中国経済の力強さは続いていると見ることができると思います。

ところで、2012年2月10日終値時点の主要新興国の年初来の株価指数上昇率を比べると、ブラジルのボベスパ指数が+12.76%、インドSENSEX指数が+14.84%、ロシアのRTS指数が+16.16%、香港のハンセン指数が+12.75%であるのに対し、中国の上海総合指数は+6.94%でしかなく、出遅れ感があります。もちろん、中国本土株は外国人投資家に完全に開放されておらず、連動性が低いことも要因の1つではありますが、金融緩和が遅れるのではないかという見方も(株価上昇を鈍らせている)1つの要因であると思います。しかし、前述のように中国経済の力強さは続いていると思いますし、CPIについても、1月はネガティブサプライズとなりましたが、2月は旧正月要因が1月とは逆に働きますので、予想以上にCPIが下がる可能性もあると思います。もしもそうなれば、逆に出遅れている中国本土株が他の新興国に追いついていく展開も考えられると思います。