市場予想を下回ったアマゾンの第2四半期決算
先週のGAFAM+T(グーグル(アルファベット)、アップル、ファイスブック、アマゾン、マイクロソフト+テスラ)の決算発表は、総じてGAFAM+T企業の強さを証明するしっかりしたものでした。そんな流れの中、唯一市場の期待を下回った決算を発表したのはアマゾン(AMZN) でした。
7月29日(木)の引け後、アマゾンは第2四半期の売上を1,131億ドルと発表しました。これは、アナリストの事前予想を2%ほど下回ったものの、会社のガイダンスである1,110億ドルから1,160億ドルのレンジ内でした。何より市場が嫌がったのは、会社側による来期(第3四半期)の売上のガイダンスが1,060億ドルから1,120億ドルのレンジと、アナリストの事前予想の1,193億ドルを下回り、営業利益も25億ドルから60億ドルと、アナリストの事前予想である82億ドルを下回ったことです。これを受け、アマゾンの株価は7月30日(金)7.56%下がりました。
今回投資家の期待を下回る決算発表を行なったのは事実ですが、長期的なアマゾンの成長が止まったということではないと思います。アマゾンの魅力がなくなったというより、同社に対する期待が高まったことへの反動です。私は今回の決算はあくまでも一時的なものだと考えています。
アマゾンが最近行った注目すべき先行投資
アマゾンは目先の利益を優先するより、長期的に優位に立てるインフラの構築に注力しています。例えば、最近アマゾンが発表したのは、アマゾン・プライムのコンテンツの強化です。5月末にアマゾンは、映画会社大手メトロ・ゴールドウィン・メイヤー(MGM)を買収すると発表しました。MGMは映画「007」シリーズ、ロッキー、ピンクパンサー等で知られている企業です。同社は年間平均8−10程度の映画館用の映画を制作しており、2020年は650本のテレビ番組を制作しています。また過去の4,000本以上の映画作品と、17,000時間以上のTV番組の権利を保有しています。今回の買収により、アマゾン・プライムの動画コンテンツが拡充されることでしょう。
7月に入りアマゾンは、世界で6万を超える小売業者のeコマースのサイトを作り、運営を行っているビッグコマースとの契約を発表しました。この契約で、アマゾンが梱包、配送業務を行うフルフィルメント・センターのインフラを使って、ビッグコマースの顧客向けにネットで注文された商品の配送を行うと発表しました。
これまでアマゾンは、自社販売の商品と、アマゾンのサイトで商品の販売を行っているサードパーティの店舗の商品しか配送していませんでした。そのインフラをサードパーティシッピングとして全く外部の企業にも開放することにしたのです。このサービスは、従来の同社で販売を行っているサードパーティの顧客向けのサービスより利益率は高そうです。
米国だけでなく、世界の小売売上に占めるeコマースのシェアはまだまだ拡大中です。このような成長市場において、アマゾンは全米でのスピーディな配送を可能にするネットワークの構築のため、大規模なインフラ投資を行っています。同社はボーイング767型機を85機保有し、米国主要空港にハブを築いており、他社に頼らずに商品配送を完結できるよう徹底的な投資を行ってきました。その結果、既にアマゾンは米国では、フェデックス(FDX)、UPS(UPS)、 USPS(米国郵便公社)に次いで、4番目に大きな配送会社となっています。
また、注文者向けのラストマイルの配送にドローンを使うべく研究を行っています。ラストマイルの配達において人件費の要らないドローンを使うことで、同社のコスト・アドバンテージは高まっていきます。米国の郊外で、実際にドローンを使った配送が始まるのも時間の問題でしょう。
このような投資は目先の利益を犠牲にするものの、同社の業界におけるポジショニングを絶対的に優位にするであろう先行投資なのです。アマゾンの事業の3本柱は、小売、広告、クラウドですが、これにもう1本の柱が追加されることになると思います。
失望感が織り込まれた後、アマゾン株価はどう評価されるか
ウォール街のアナリストによるアマゾンの平均目標株価は4,179ドルで、7月30日(金)の引値の3,327ドルは約26%割安の評価となっています。
市場は効率的です。今回の会社側のガイダンスに対する市場の失望感が株価に織り込まれた後に残るのは、アマゾン株価の割安感となると考えています。