中国本土市場は下落基調が続いています。先週は12月23日(金)こそ反発したものの、12月22日(木)まで4日続落となっています。2012年第2四半期に中国の景気が底入れし、それまで企業業績の成長は鈍化するであろうと考える中国本土のアナリストが増えているようです。ただ、その分、株価は低水準となっており、上海総合指数をみると、2011年の予想PERベースで10倍前後という、ここ数年来で最低水準になっています。一方、香港市場は米国株の上昇が牽引する形で比較的堅調な株価推移となっており、香港H株指数はここ半年ほど抵抗線となっている11,000ポイントを上抜ける可能性も出てきました。

さて、香港H株指数は全体の40%ほどを銀行セクターが占めており、銀行セクターの値動きは指数に大きな影響を及ぼします。しかし、ここのところ、中国の銀行セクターにはプラスのニュースが続いています。まず、中国金融当局は不良債権リスク抑制のため、2011年5月に「バーゼルIII」(バーゼル銀行監督委員会が行っている新銀行自己資本規制)に合わせ、中国銀行業の新たな監督管理基準を発表し、2012年1月1日より実施するとしていました。新基準では必要な自己資本比率が引き上げられているのですが、第3四半期末時点で、五大国有銀行のうち、農業銀行(1288)、交通銀行(3328)、中国銀行(3988)の自己資本比率は新基準に達していません。工商銀行(1398)と建設銀行(0939)は新基準を少し上回っています。2011年に中国の上場銀行は資本充実のため、増資や債券発行などによって、合計5000億元以上の資金を調達し、需給面で株式市場に大きな圧力を与えてきました。新基準が実施されれば、さらに4000億元以上の調達がなされると見られています。しかし、最近になって新基準「バーゼルIII」の実施が延期されるという予想が出てきています。そうなれば、株式市場の流動性にプラスですし、銀行セクターにとっても増資懸念が緩和することになります。

一方で海外格付け機による評価の上昇もあります。11月9日に米格付け会社スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)は銀行の格付けについて、新基準を採用すると発表しました。新基準では、国家信用リスクや国による銀行への支援力を非常に重要な要素としています。中国の銀行は地方政府などへの貸し付けが不良債権化する債務問題が懸念されていましたが、危機発生の際には中国政府が支援する公算が大きいため、新基準によると中国の銀行のリスクは下がることになります。

そして11月29日、S&Pは新基準による、世界上位37社の大手金融機関の再格付けを発表しています。そこでは、シティバンク、モルガンスタンレーなどの大手海外銀行の格付けが引き下げられた一方で、中国銀行と中国建設銀行の格付けは「A-」から「A」に引き上げられ、中国工商銀行は「A」に据え置かれました。さらに、S&Pは12月6日にアジア太平洋地域の34金融機関の再格付けも発表。そのうち、招商銀行(3968)の格付けは「BBB」から「BBB+」に引き上げられ、交通銀行の格付けも「BBB+」から「A-」に引き上げられています。これらのプラスのニュースによって徐々にではありますが、反発の下地が作られてきているように見えます。