2011年12月9日(金)に新華社が、中国の政治局が「慎重な」金融政策と「積極的な」財政政策という現在の公式スタンスを来年も維持することを決めたと伝えたことがキッカケとなり、中国本土市場と香港市場は12月15日(木)まで6日続落となりました。経済指標がスローダウンを示す中で、積極的な緩和策が期待されているところでしたので、前述の報道は目先には何も緩和策が発表されないとの失望につながりました。

そして実際のところ、中国の経済政策を決定するため年に1度行われる中央経済工作会議が12月12日~14日に開催されましたが、こちらもサプライズはありませんでした。また、14日(水)に発表された中国のマネーサプライやHSBC中国製造業PMIなどにも大きなサプライズはありませんでした。

一方、引き続き欧州ソブリン問題も混迷が続いており、株価を下げる要因となっています。12月16日(金)にはNY連銀総裁がFRBは欧州危機波及を防ぐ追加策は講じないと証言。これは現在の欧州ソブリン問題を、欧州だけの問題と突き放しているような印象を受けます。米国にとっては過去10年で勢力を増しつつあったユーロの信任が落ちた方が、都合が良いのかもしれません。

また、英国と独・仏国間の対立も険しくなってきています。そして、EUと距離を置いてきている、この米・英両国に、欧州を揺らす可能性のある世界三大格付け会社の姿勢はというと、米ムーディーズは16日(金)にベルギーを2段階引き下げました。英フィッチは仏国債の格付けの見通しを引き下げており、2012年1月末までに5ヶ国を引き下げる可能性があるとしています。米S&Pも15カ国についてダウングレード警告を発しています。

話を中国にもどしますが、旧正月までに中国の預金準備率がさらに引き下げられる可能性は十分あります。中国では、毎年12月と翌1月は、ボーナスの支払いや新年前の買い物などの支出で、企業と一般家庭の資金需要が大きく拡大しますし、2012年の旧正月は1月23日(月)からと、やや早目のスケジュールだからです。ひょっとすると予想外に早いタイミングで一度サプライズ的に追加の預金準備率の引き下げがあるかもしれません。しかし、経済の大きな流れとしては前回指摘したとおりです。

依然として消費者物価指数は高水準のままであり、積極的な緩和策が打ち出されるのは消費者物価指数が落ち着くと見られる来年の夏以降となるでしょう。緩和策が採られるようになれば、公共投資がストップして業績が大きく落ち込んでいる国営企業などの業績を一気に吹き返すはずですから、インパクトは大きいのですが、ともあれ、もう少し時間が必要です。現在はそのタイミングを中国経済指標と欧米の動向をにらみながら待ち、株価が調整する中で投資チャンスを探す段階が続いている状況であると思います。