前編では、NYダウの仕組みや特徴を解説しました。後編ではNYダウの歴史と構成銘柄の変遷について解説します。

NYダウの歴史

前編でもご紹介したように、NYダウには120年以上の歴史があります。この間の歴史を知っておくと、

・NYダウが下落したら、どうなるのか
・どのような銘柄入れ替えが起こる可能性があるのか

を考える上で役立つのではないでしょうか。ぜひ、NYダウを参考にしたい方はNYダウの歴史も確認しておきましょう。

算出開始当初は工業株中心の12銘柄

NYダウは、1896年5月に算出が開始されました。工業化が加速している当時の時代背景を反映した工業系の銘柄が中心となっており、今よりも少ない12銘柄で構成されていました。

【図表1】1896年当初の12銘柄
出所:マネックス証券作成

上記の12銘柄の中で現在も同じ社名で存続しているのは、世界最大級のコングロマリットであるゼネラル・エレクトリック(GE)のみです。GEは長い歴史の中で一度除外され、再びNYダウの採用銘柄に選出されましたが、2018年にまた除外となりました。

その結果NYダウの算出開始当初から選ばれ続けている銘柄は1つもなくなり、常に変動し続けていることがうかがえます。

1928年から30銘柄に!年代ごとの構成銘柄の変遷

1928年になると、NYダウは現在と同じ30銘柄を選出する方法に変わりました。当初から米国を代表する企業を選出していたため、時代背景に合わせて構成銘柄が移り変わっています。

例えば1928年と1950年では下記のような違いが見られます。

【図表2】NYダウの1928年と1950年の構成銘柄
出所:マネックス証券(太字が新たに加わった銘柄)

1928年は工業化が進んでいく中で、工業系の銘柄が多くなっています。1950年代になると大衆の消費が拡大していき、P&G(PG)などの消費財セクターが取り入れられるようになりました。

2000年に入るとIT革命の影響を受けて、下記のようにマイクロソフトやインテルなどの情報技術セクターの企業が組み入れられるようになります。

【図表3】NYダウの2000年の構成銘柄
(太字が新たに加わった銘柄)
出所:マネックス証券

2000年から2020年までの20年間では約半数の銘柄が入れ替わっており、より情報技術や大衆向けのサービスセクターの企業が増えてきています。

このように、NYダウは30銘柄になってからも時代の移り変わりとともに銘柄の入れ替えが行われており、今日まで影響力のある指数として続いています。

過去に見舞われたNYダウの暴落

NYダウは長期的に成長し続けている指数ではありますが、過去には暴落に見舞われたことがあります。

NYダウが誕生してから今日まで、前営業日と比べて下落率が高かったワースト5位は以下のようになっています。

【図表4】NYダウ下落率ワースト5位
出所:マネックス証券

上記の通り、NYダウは過去において様々な世界情勢等の影響を受けて大暴落が起こっています。しかし、NYダウはこのような歴史を経て、今も代表的な指数として存続しています。

NYダウは個人投資家の関心が高い指数

NYダウに選出されている銘柄は「ニューヨーク証券取引所」か「ナスダック市場」に上場しています。2020年8月時点でニューヨーク証券取引所は世界1位の株式時価総額を、ナスダック市場は世界2位の株式時価総額を誇っています。

その中でも選りすぐりの30銘柄の株価に焦点を当てたNYダウは、個人投資家の関心が高い指数です。

まとめ

最後に、前編・後編の内容をまとめます。

・NYダウ(正式名称:ダウ・ジョーンズ工業株平均株価、ダウ工業株30種平均)とは、米国を代表する株価指数の1つ

・NYダウが指数として使われる理由は次の2つ

(1)持続的に成長し続けている、基準を満たした影響力のある30銘柄が厳選されている
(2)約120年の歴史の中で、複数回の暴落後も回復し、長期にわたって成長し続けている

・NYダウの特徴は次の3つ

(1)高い水準を維持できるように、不定期で銘柄を入れ替えている
(2)各銘柄の株価変動に左右されやすい
(3)NYダウの銘柄を高配当順にして上位10社に分散投資をするダウの犬と呼ばれる投資戦略がある

・NYダウの歴史

(1)1896年に工業系の銘柄を中心とした12銘柄からスタート
(2)1928年から現在と同じ30銘柄になり、時代に合わせて適宜、構成銘柄を入れ替えている
(3)ブラックマンデーや世界恐慌など、複数回の暴落を経て今に至っている