3月12日の記事以降、これまでに5回にわたってスクリーニング機能の活用法をご紹介してきました。第5回目の記事で以下のスクリーニング条件にて検索したところ、はごろもフーズ(2831)、ピックルスコーポレーション(2925)、カンロ(2216)、大森屋(2917)といった一定程度知名度のある銘柄が絞り込めるというところまでご説明いたしました。(検索結果は4月2日時点のものです)

【図表1】4月2日記事で行ったスクリーニング内容
出所:筆者作成(2021年4月2日時点)

このスクリーニング結果を出すまでに、いくつかスクリーニングのポイントをご案内しました。改めて以下のポイントを思い出してください。

・スクリーニング項目は非常に多いが、よく使う重要なものは少数である
・最初は数値条件をあまり入れず、業界や規模など必要項目のみ設定し、対象となる企業の数値の水準を把握してから、それをもとに数値条件を決めると良い
・スクリーニングした結果、自分の考えていたような企業が少ない場合は数値条件を緩和するなどスクリーニング条件を見直す

このようなスクリーニングの結果、絞り込まれたのが上記の企業でした。これらの企業に加え、直近で条件を満たす「エバラ焼き肉のたれ」で知られるエバラ食品工業(2819)を加えると、以下のようになります。

【図表2】スクリーニング条件を満たした企業
出所:筆者作成(時価総額は4月8日現在、売上高は直近発表済の通期決算)

まず、時価総額と売上高だけを並べていますが、この5社を見ると「売上高が高いほど、企業の価値である時価総額も高い」ということに気づかれるのではないかと思います。このような認識が投資対象の分析の第一歩です。

時価総額と売上高が比例していそうなので、時価総額/売上高を見てみましょう。

【図表3】図表2に時価総額/売上高を追加したもの
出所:筆者作成

これらの企業の時価総額/売上高は概ね同じ傾向だと分かると思います。最も低い大森屋と、最も高いエバラ食品工業でも2倍程度です。これはもともと同じ業種の同じような企業を対象にスクリーニングしているので当たり前と言えば当たり前のことです。逆に言うと、この中でこの数値が低い企業は、売上高に対する評価が低いので、割安ではないかと考えられます。

「売上高よりも重要なのは利益ではないのか」という声も出てくると思います。仰る通りです。次は経常利益と経常利益率も加えてみましょう。

【図表4】図表2をもとに経常利益などを追加したもの
出所:筆者作成

こうして見ると、売上高で見た場合、割安に見えたはごろもフーズと大森屋でしたが、経常利益で見ると大森屋はそこまで割安になっていないことが分かります。時価総額/経常利益が低いほど割安ですが、大森屋はピックルスコーポレーションと同水準です。

はごろもフーズは最も割安と言えますが、売上高で見た場合ほど割安には見えません。これは、大森屋の経常利益率(経常利益/売上高)が低いからです。逆に、売上高の面で割高に見えたエバラとピックルスは経常利益率が高いため、経常利益で考えると割高な感じはせず、むしろカンロが割高に映るという結果になりました。

【図表5】はごろもフーズの時価総額、売上高、経常利益
 
出所:マネックス証券(2021年4月9日時点)
※ここまでの分析に使った時価総額、売上高、経常利益などの数字はいずれもマネックス証券のウェブサイトでご確認いただけます。

ご注意いただきたいのは、これらの分析はあくまでも直近の各社の全体だけを見たものだということです。これらに加え、まずは内容・時系列の分析も必要でしょう。例えば、内容で言うと各社の売上・利益はどのような事業から成り立っているのかを確認したいところですし、時系列で言うと「この売上や利益水準が安定しているのか、または成長傾向なのか」などを見たいところです。これらの分析にはマネックス証券の「銘柄スカウター」や「会社四季報」などが役に立ちます。

つまり、良い投資対象を探すには、企業の全体像、内容や時系列の分析などが重要です。そして、先述のようにそれらを各社で比較することも大事です。これらを分析していくと、「この企業は同業他社に比べて、利益率が低すぎないか」、「この企業は急に成長が止まったのではないか」、「この企業のこのビジネスは非常に魅力的なのに、この事業のせいで全体の業績が悪い」などと気になるポイントが出てくると思います。これはまさにアクティビストの目線です。

例えば上記のような課題が経営陣によってやがて解消される…という考え方もできるでしょう。しかし、アクティビストはこのような課題に直接的に働きかけるなど行動することで、より早くその企業の変化を促し、投資成果を向上させようとしていると言えます。そのため、アクティビストの行動を理解して投資活動を行うには、このような企業の発見、企業分析を行なうことが必要であると言えます。

このような企業探し、分析は非常に奥が深い話です。今回は複数回にわたって詳しく説明しましたが、これらの分析はほんの一部分に過ぎません。これからもどのような分析が行えるかをご案内していきたいと思います。