東証の市場改革で注目したい銘柄選び

3月5日付の記事では東証が予定している市場改革を投資機会とするために、注目したいポイントについて解説しました。その内容を簡単にまとめると、以下の通りです。

・東証の市場改革では「持ち合い」と呼ばれる企業同士の相互の株式保有の解消が進むと思われる
・現在、株価が高値圏にあることから、株式は比較的有利な価格で売却でき、利益や現金収入が見込めると考えられる
・売却収入は配当金、自己株式取得など株主還元に回される部分が多いと考えられる

つまり、他社株式を多数保有していて、割安な銘柄が狙い目ではないかと思われます。眠っていた資産が株式売却により、株主還元原資になりうる現金化が進む、つまり活きた資産に変わるのではないかという思惑です。

上記の考えが正しいかどうかは実際の動きを待つことになりますが、上記の考えに沿うと、「他社株式を多数保有していて、割安な銘柄」は具体的にどの銘柄?と気になる方もいらっしゃるかと思います。3月5日付の記事では以下のようなスクリーニング条件で検索することをご案内しました。

【図表1】スクリーニング条件
出所:筆者作成

そして、このスクリーニング機能で出てきた銘柄は、実際に株式などの資産を多数持っている一方、市場からのそれら資産への評価は低そうであること、一部の銘柄はすでに株式を売却し、その売却代金を自社株買いに充て、株価が上昇していることをお伝えしました。(詳細は3月5日付の記事をご参照ください。)

同記事をお読みくださった方から、「なぜこの条件で検索するか」、「それらの銘柄の保有株式をどのように調べるか」について知りたいという声をいただきました。そこで、今回から数回にわたって、その方法を解説したいと思います。

スクリーニング機能とは何か?

スクリーニング機能というのは簡単に言うと、一定の条件を満たす銘柄を絞り込む(スクリーニングする)機能です。たとえば、グルメサイトなどで、和食、飲み放題あり、土曜日営業、最寄り駅から5分以内、予算は5,000円以内・・・などの条件を入れてお店を探すことが、よくあると思います。これを株式において行なうのがスクリーニング機能です。

例えば、マネックス証券のスクリーニング機能を開くと以下のような画面が出てきます。条件の「基礎情報」という大項目には「証券種類」(株式かETF、REITか)、「取引所」(どこの取引所に上場しているか)、「業種」、「投資金額」(投資するために必要な金額)、「時価総額」(その会社の時価総額)などの中項目が入っています。その他の「業績実績」、「業績予想」などの大項目にもそれぞれ4-14個の中項目があり、幅広い項目から選んで検索できます。

【図表2】スクリーニング機能(条件未入力)
出所:マネックス証券ウェブサイト

スクリーニング機能の活用例

実際に条件を入力してみましょう。今回は「取引所」、「時価総額」、「PBR」、「配当利回り」、「配当性向」を条件にしています。右側の「該当銘柄数」の数字にもご注目ください。これは、各条件を満たす銘柄数を絞り込まれていく過程で徐々に銘柄数が絞り込まれていることが確認できます。

以下の例ですと東証上場銘柄は4,075銘柄、そのうち時価総額1000億円以上の銘柄は806銘柄、さらにPBRが0.6倍以下のものは142銘柄、と絞り込まれているのが分かると思います。この絞り込み結果を見ることで、どの条件が厳しいかが分かります。

以下の例ですと、PBRが0.6倍以下の142銘柄のうち、配当利回りが3%以上のものは102銘柄ということで、あまり減っていないので、配当利回りの条件は厳しくないことが分かります。しかし、時価総額1000億円以上の806銘柄の中で、PBRが0.6倍以下の銘柄は142銘柄となっており、かなり絞り込まれていますので、PBRの条件が厳しいということが分かります。

【図表3】スクリーニング機能(条件入力後)
出所:マネックス証券ウェブサイト(2021年3月12日時点)

このように自分が探したい銘柄の条件を指定することで、銘柄を絞り込めるのがスクリーニング機能です。

アクティビストが狙いそうな銘柄や、制度が変わることで狙い目になりそうな銘柄などを探す際に、割安性や資産規模などの条件を確認することが基本的に必要になってきます。

全ての銘柄について条件を満たしているか、1つずつ順に見ていくことは不可能でしょう。その際に、このスクリーニング機能が役に立ちます。スクリーニング機能で絞り込むことで、条件を満たす銘柄をしっかりと調べることができるのです。

今回は、スクリーニング機能の基本的な紹介でした。次回以降、スクリーニング機能でどのような項目を、どういう条件で指定するか、そして絞り込んだ銘柄を実際にどのように調べていくのかを見ていきましょう。