本コラムでは「注目の銘柄を探す『スクリーニング機能』の活用法」と題して、第1回目第2回目では自分が投資したい条件に合った会社を探すためのスクリーニング機能をご紹介しました。その中で、様々な項目で絞り込みができるスクリーニングの基本的な仕組みと、業種・時価総額を使った活用方法をお伝えしています。

それを踏まえて、第3回目第4回目の記事では具体的にどのような項目で検索するかを説明しました。今回は検索結果から、どのように投資対象を検討していくかについて解説したいと思います。(※)

では、さっそくスクリーニングを行いましょう。まずは、第4回目の記事と同様に、「食料品」業種の中から小型で割安な企業のスクリーニングを行いましょう。条件は以下の通りです。

【図表1】スクリーニング条件とその内容
出所:筆者作成

「最初はPER・PBRの数字を設定せずに全体像を見る」というのは、第4回目で説明した通りです。結果は割愛しますが、上記の条件を満たす銘柄は73銘柄(2021年4月2日時点)です。73銘柄のうち、真ん中に位置する37位のPERは18.4倍、PBRは0.9倍でした。つまり、このあたりが小型の食品会社のPER・PBRの目処ということで、これより低いものについては比較的割安であるということになります。

そこで、そのいずれの条件で見ても「割安である」と言える、PERを18.4倍以下、PBRを0.9倍以下で改めてスクリーニングしてみましょう。つまり、以下のような条件になります。

【図表2】変更後のスクリーニング条件とその内容
出所:筆者作成
※マネックス証券のスクリーニング機能では利益面で赤字の企業、資産が債務超過の企業はPER・PBRがマイナスになるため、それぞれ「0以上」ということも条件に入れましょう。

この条件で検索すると、該当銘柄は17銘柄(2021年4月2日時点)になります。先ほどの73銘柄が約1/4に絞られたことになります。もちろん、一般にPER・PBRが低い銘柄ほど割安ですので、これら17銘柄はそれらの観点では、「相対的に割安である」と言えます。

ただ、割安には割安の理由があるので、これらの銘柄が「総合的に見て割安である」と言えるわけではないことにも注意が必要です。このような銘柄の中から、「本当に割安である」と思える銘柄を探すことが、銘柄選びの醍醐味と言えるでしょう。

それでは、この17銘柄を時価総額順に並べてみましょう。

【図表3】図表2の条件で絞り込んだ銘柄を時価総額順に並べたもの
出所:マネックス証券ウェブサイト(2021年4月2日時点)

上記のリストを見てみると、これまでのスクリーニングで出てきた企業に比べて、知名度の低い銘柄が多い印象を受けるのではないでしょうか。それもそのはずで、上位の銘柄は飼料や砂糖を扱う企業が並んでおり、個人向けと言うよりは畜産会社や製菓会社などメーカー向けの企業が多いのです。

他にも法人向けの食品会社が多いのが特徴的です。一方、エバラ食品工業(2819)、林兼産業(2286)、旭松食品(2911)など個人向けで一定の知名度がある企業も含まれています。

この時点で、いくつか銘柄選びの選択肢があります。1つは、法人向け・個人向けをどのように評価するかです。法人向け企業は個人向け企業に比べると、競争にさらされやすい面がありそうです。

例えば、マヨネーズの大手企業といえばキユーピー(2809)を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。一方、上場している企業でケンコーマヨネーズ(2915)という会社があります。実はいずれの企業も個人向け・法人向けそれぞれにビジネスを行っていますが、キユーピーは個人向けに強いブランド力を持ち、ケンコーはその面で劣ることからコンビニや外食産業など加工食品のマヨネーズに強みを持っています。

しかし、過去の決算を見てみると、キユーピーのほうが利益水準が高く、やはり個人向けにブランド力のある企業はそのような強みがあると考えられます。PER・PBRで見てもキユーピーのほうが割高になっています。一方、法人向けのビジネスのほうが安定しているという見方もできるでしょう。日本の電機会社が個人向けビジネスで苦戦し、法人向けビジネスを強化しているのはその例と言えるかも知れません。これらの事情をもとに自分はどう投資したいかを考えます。

その上で、個人向けのほうが自分の実感などもあるので、より適切な投資判断ができそうだと考えたとします。その場合、この17銘柄の中から個人向けの企業を選ぶかどうかを考えることになります。先述の通り、これらの会社は法人向けが多く、個人向けは比較的規模が小さい企業が多そうで、選択肢としては不十分かも知れません。その場合、元の絞り込み条件をもう少し緩くすることが考えられます。例えば、PERを19.4以下から22以下に、PBRを0.9以下から1.2以下にします。

【図表4】図表2の条件でPERとPBRを緩和した内容
出所:筆者作成(2021年4月2日時点)

そうすると、該当会社が17銘柄から23銘柄に増えました(2021年4月2日時点)。時価総額順に並べると、はごろも(2831)、ピックルス(2925)、カンロ(2216)、大森屋(2917)といった知名度のある企業が並ぶようになります。

これらの中から投資対象を判断する場合、どのように見ていくかについて、次回解説したいと思います。

(※)今回の記事のスクリーニング結果はすべて4月2日時点のものです。過去の記事の結果と異なる部分がありますが、スクリーニングのポイントは同じです。