「100年に一度」のインフラ投資案の内容
バイデン米大統領は8年間で2兆ドル(約220兆円)を超えるThe American Jobs Plan (米国雇用計画)と銘打ったインフラ投資を発表しました。世界で最も強く、最も弾力性があり、最もイノベーティブな経済を築き、数百万人の米国人にとって給料の良い雇用を生み出すことを目的としており、「100年に一度」あるかないかのメガサイズの投資計画であるとしています。この支出の内訳は、大きくは以下の通りとなります。
輸送整備関連
現在、売上の2%を占める電気自動車(EV)を普及させるための税額控除等のインセンティブ、2030年までに50万台のEV用の充電ステーションの建設(1740億ドル)、2万マイルのハイウェイや道路の近代化、1万の小型橋梁の修復(1150億ドル)、公共輸送システムの整備(850億ドル)、鉄道網の整備(800億ドル)、災害対策(500億ドル)など。
建設、公益事業関連
低価格の住居建設や補助金(2130億ドル)、高速インターネットの整備(1000億ドル)、送電網、クリーンエネルギー関連(1000億ドル)、学校(1000億ドル)など。
雇用とイノベーション関連
製造業の米国への回帰(520億ドル)、半導体業界(500億ドル)、全国科学基金(500億ドル)、労働者訓練(480億ドル)、クリーンエネルギー製造(460億ドル)、気候温暖化に関する新しい技術の研究開発(350億ドル)など。
高齢者や障害者向けの介護(4000億ドル)
高齢者や障害者だけでなく、介護者等への給料や恩恵を増やす。
インフラ投資の財源
この大型投資の財源について、バイデン米大統領は主に連邦法人税の引き上げで賄いたいとしています。米国では2017年にトランプ前米大統領時代に法人税を今までの35%から21%へカットしました。今回その21%の法人税を28%へ引き上げるとし、15年間の増税で今回の大型投資の財源とするとしています。
加えて、海外での売上の多いグローバル企業の海外での売上に対する増税も計画されています。このグローバル企業の海外での売上に対する税制の変更だけでも15年間で1兆ドルの税収が見込めるとしています。
民主党のペロシ下院議長としては、7月4日の独立記念日までに、下院での可決を目指し、8月の夏休み前に上院の審議、採決ができるようにしたいということなのです。しかし、議会では既に企業増税などで財源を賄うことに反対している共和党との厳しい論戦が待っており、法案成立までには長い道のりとなりそうです。
今回の米国雇用計画に加え、数週間以内には第2弾として、医療、子育てや教育などを対象にした「米国の家庭のための計画」と呼ばれる人的インフラ計画を発表する予定となっています。 こちらの方の財源は、主に個人所得税の増税からになる見込みということです。
株価の反応は?
では、肝心の株価の反応は…と言いますと、基本的には今回発表された内容は予想通りでして、インフラ投資計画発表の翌日4月1日(木)マーケット自体は上がっています。ただ、今回のインフラ投資案の恩恵を受けるはずであろう銘柄の株価は2020年から上昇し続けてきたこともあり、セル・オン・ザ・ニュース(ニュースで売り)といった反応でした。
その一方、セクターローテーションで、これまで売られてきた成長セクターであるテクノロジー銘柄が買われ相場を押し上げ、S&P500は史上最高値を更新するという展開となっています。
2021年に入って売られてきたEV関係銘柄については、他の銘柄群が上がらないなか、セクターローテーションの一環として、EV関連、充電ステーション銘柄などが買われています。
増税が米国企業の収益に与える影響は?
増税が収益に与える影響については、ウォール街のストラテジストの試算によりますとS&P500のEPSに5-10%ほどネガティブな影響があるとのことです。しかし、増税がいつ、また実際にどの程度まで税率が上がるかが明確になっていない今、マーケットは現時点では増税より、今回の法案のポジティブな側面しか気にしていないとう展開となっています。