ルール変更で経済効果にも影響、サッカーも米国式スポーツビジネスに

飲水タイム=CMタイムの導入で変わる経済効果

サッカーワールドカップ(W杯)北中米大会が開幕して1週間がたち、ますます盛り上がりをみせています。すでに48の出場国すべてが登場しており、今後は決勝トーナメント進出に向けてさらにヒートアップしそうです。

今回のW杯は米国、カナダ、メキシコの3ヶ国共催で、出場国・地域が前回までの32から48、試合総数が64から104にそれぞれ大幅に増えています。もちろん経済規模も圧倒的に大きくなるとみられており、特に注目されるのがルールの変更に伴う経済効果です。

サッカーは前後半がそれぞれ45分間で、ハーフタイム15分間というのが基本的な構成です。今回もこれに変更はないのですが、前半と後半のそれぞれの半ばほどに飲水タイムとして3分間のプレー中断時間が導入されました。

サッカーのテレビ中継ではこれまで、ハーフタイムを除けば試合の途中にCMを挟むことが困難だったのですが、飲水タイムにCMを入れることが可能になります。スポーツコンテンツとしての使い勝手が格段に良くなり、価値は高まると予想されています。

実質的なクオーター制への移行でサッカーも米国化

実質的なクオーター制(1試合を4分割する方式)への移行と捉える向きもあります。クオーター制のスポーツの代表格はアメリカンフットボールのNFLやバスケットボールのNBAで、ともにスポーツビジネスとして大成功を収めています。サッカーも米国を中心とする今回のW杯を契機にアメリカ化が進むとみられています。

今回のW杯ではスペインやフランス、イングランド、ブラジル、ポルトガル、アルゼンチンなどが優勝候補に挙げられています。では、経済効果や営業面の勝者となる米国株は何か、関連銘柄を確認してみたいと思います。

コカ・コーラ[KO]、FIFAとIOCの最上位スポンサー

「FIFAパートナー」7社中の1社

コカ・コーラ[KO]は世界最大級のソフトドリンクメーカーで、ボトリング会社にライセンスを供与するケースを含めれば、世界の200以上の国・地域で事業を展開しています。

コカ・コーラは世界に7社しかない国際サッカー連盟(FIFA)の最上位スポンサー「FIFAパートナー」の1社で、今回のW杯でも大々的な広告展開が見込まれます。世界で最も人気のあるスポーツの世界的な巨大イベントに広告を打つ効果は極めて大きいのです。

また、FIFAの公式飲料パートナーとして、それぞれの会場で独占販売できるメリットもあります。夏の暑い時期に計104試合が行われる予定で、販売収入はもちろん会場での宣伝効果も高いと見込まれます。

IOCの最上位スポンサーも

コカ・コーラは国際オリンピック委員会(IOC)と契約する最上位スポンサー「ワールドワイドオリンピックパートナー」の1社でもあります。FIFAとIOCの両方で最上位スポンサーとなっているのは世界中の企業の中でコカ・コーラとクレジットカードのビザ[V]だけです。

2026年のサッカーのW杯、そして2028年のロサンゼルス夏季五輪とお膝元の米国を中心に巨大スポーツイベントが続きます。広告費は莫大ですが、両社はスポンサーとして大々的に露出し、それに見合う効果を追求するとみられます。

【図表1】コカ・コーラ[KO]:業績推移(単位:百万ドル)
出所:LSEGよりDZHフィナンシャルリサーチ作成
※期末は12月
【図表2】コカ・コーラ[KO]:週足チャート(移動平均線 緑色:13週、橙色:26週)
出所:マネックス証券ウェブサイト(2026年6月19日時点)

スポーツブランドは三つ巴、ナイキ[NKE]はいかに

アディダスの牙城は崩せず

スポーツ用品のFIFAパートナーはアディダスで、公式球もアディダス製です。ナイキ[NKE]はお膝元の北中米大会といえどアディダスの強固な牙城は崩せませんでしたが、テレビ画面などでも目立つユニフォームのサプライヤーとしては存在感を発揮しています。

出場48ヶ国のうちアディダスがユニフォームを提供しているのが14ヶ国、ナイキが12ヶ国、プーマが11ヶ国で、勢力図としては三つ巴です。

なお近隣のライバル国同士ではアディダスとナイキもそれぞれの陣営でサプライヤーとして張り合っている印象です。例えば日本代表がアディダスで韓国がナイキ、アルゼンチンがアディダスでブラジルがナイキ、ドイツがアディダスでフランスがナイキ、ベルギーがアディダスでオランダがナイキといった具合です。

今回の優勝国着用ユニフォームはナイキ?

ワールドカップの優勝国が着用していたユニフォームは2014年のドイツがアディダス、2018年のフランスがナイキ、2022年のアルゼンチンがアディダスです。順番からいえば今回はナイキとなり、今大会の優勝候補はフランス、ブラジル、イングランド、オランダと強力な面々がそろっています。開催国の米国とカナダもナイキのユニフォームを着用しています。

一方、アディダスはスペイン、アルゼンチン、ドイツとこちらもそうそうたるメンバーで、開催国の一角のメキシコもアディダスです。

優勝国のユニフォームがどちらになるのかは、世界でマーケティングを行うナイキにとって非常に重要です。メディアでの露出などを含め、アディダス勢に勝てるかが焦点になるとみられています。ただ、ポルトガルやモロッコをサポートするプーマもダークホースと言えるかもしれません。

【図表3】ナイキ[NKE]:業績推移(単位:百万ドル)
出所:LSEGよりDZHフィナンシャルリサーチ作成
※期末は5月
【図表4】ナイキ[NKE]:週足チャート(移動平均線 緑色:13週、橙色:26週)
出所:マネックス証券ウェブサイト(2026年6月19日時点)

ビール販売に押し上げ効果、勝者はどちらの銘柄か

「バドワイザー」のアンハイザー・ブッシュ・インベブ

夏場の大会でテレビ観戦をする人が増えれば、ビールの消費量が大きく伸びると予想されます。FIFAパートナーに次ぐカテゴリー「ワールドカップ・スポンサー」の1社で、公式ビールスポンサーになっているのがアンハイザー・ブッシュ・インベブ[BUD](以下ABインベブと表記)です。

ABインベブといえば「バドワイザー」が有名で、「バドライト」が売れ筋ですが、トランスジェンダーのインフルエンサーと組み、保守とリベラルの双方からの反発で負った傷は完全に癒えたわけではないようです。ただ、ライトビールの「ミケロブ・ウルトラ」の販売が好調で、ワールドカップを契機にバドライトが復調すれば、大きな恩恵を享受できそうです。

さらに「コロナ」や「モデロ・エスペシアル」、「パシフィコ」、「ビクトリア」といったメキシコビールを米国以外で販売していることも追い風です。メキシコやブラジルなど熱狂的なサッカーファンの多い中南米の国々と時差があまりなく、自国の試合が夜にテレビ中継されるのであればビール消費量が一気に跳ね上がるのは必至です。

米国でメキシコビールの販売ライセンスを持つコンステレーション・ブランズ

一方、コンステレーション・ブランズ[STZ]は「コロナ」、「モデロ・エスペシアル」、「パシフィコ」、「ビクトリア」といったメキシコビールを米国で販売できるライセンスを持っています。

もともとはABインベブが2013年にこうしたブランドを持つメキシコのグルーポ・モデロの買収に乗り出したのですが、これらのブランドを米国で展開した場合、米国の反トラスト法規(独占禁止法)に抵触する恐れがあったため、ABインベブは米国での販売を断念。コンステレーション・ブランズがグルーポ・モデロの米国事業を買い取ったのです。

米国でメキシコビールの人気は高く、「モデロ・エスペシアル」が販売量で首位に躍り出たこともあります。しかしトランプ第2次政権が始まると、中南米からの移民に対する風当たりが強まり、メキシコビールの販売量にも影響が出たようです。

ただ、今回のW杯では米国に住む中南米からの移民も、テレビの前に陣取る時間が長くなりそうです。そのため、米国内でもメキシコビールの消費量が増えると予想されます。

【図表5】アンハイザー・ブッシュ・インベブ[BUD]:業績推移(単位:百万ドル)
出所:LSEGよりDZHフィナンシャルリサーチ作成
※期末は12月
【図表6】アンハイザー・ブッシュ・インベブ[BUD]:週足チャート(移動平均線 緑色:13週、橙色:26週)
出所:マネックス証券ウェブサイト(2026年6月19日時点)
【図表7】コンステレーション・ブランズ[STZ]:業績推移(単位:百万ドル)
出所:LSEGよりDZHフィナンシャルリサーチ作成
※期末は2月
【図表8】コンステレーション・ブランズ[STZ]:週足チャート(移動平均線 緑色:13週、橙色:26週)
出所:マネックス証券ウェブサイト(2026年6月19日時点)

ペプシコ[PEP]は公式スナックパートナー、菓子ブランドで展開

飲料・食品大手のペプシコ[PEP]もワールドカップ・スポンサーです。ただ、ライバルのコカ・コーラが最上位のFIFAパートナーとして公式飲料という強力なポジションを築いているため、ペプシコーラなどの飲料で対抗することはできません。

ペプシコは菓子ブランドの「フリトレー」を前面に出し、スナックの公式パートナーとしてW杯商戦に臨む方針です。主な製品はポテトチップスの「レイズ」、コーンスナックの「チートス」、トルティーヤチップスの「ドリトス」など。テレビ観戦時のおやつや、おつまみの需要を取り込むと予想されます。

加えて、米国企業ではマクドナルド[MCD]やバンク・オブ・アメリカ[BAC]、ベライゾン・コミュニケーションズ[VZ]がワールドカップ・スポンサーです。このほか地域パートナーなどのカテゴリーもあるため、多様な企業がプロモーションを強化し、経済全体が活気づくと見込まれます。

【図表9】ペプシコ[PEP]:業績推移(単位:百万ドル)
出所:LSEGよりDZHフィナンシャルリサーチ作成
※期末は12月
【図表10】ペプシコ[PEP]:週足チャート(移動平均線 緑色:13週、橙色:26週)
出所:マネックス証券ウェブサイト(2026年6月19日時点)