リーマンショック以降の長い金融緩和にも関わらず、世界的にインフレになる気配はずっとありませんでした。しかし、その動きに変化が見え始めています。

米国の長期金利上昇はインフレ懸念を反映

マーケットで注目されているのは、米国の長期金利上昇です。指標となる米10年債利回りは2020年末から上昇を始め、直近では1.75%と3ヶ月で0.9%も上昇しています。

これは将来のインフレ率の上昇によるFRB(米連邦準備制度理事会)の利上げの可能性を反映していると考えることができます。

米国の金融当局であるFRBは、当面の利上げの可能性について否定していますが、インフレが顕在化すれば、利上げに追い込まれる可能性はゼロではありません。

新興国でも通貨安からのインフレが一部の国で起こっている

既に、新興国の一部では、インフレの加速により利上げに追い込まれている国が出てきました。ブラジルやトルコなどの為替が脆弱な国々です。

3月17日にブラジル中央銀行は、政策金利を0.75ポイント引き上げ、2.75%にすると発表しました。これは約5年半ぶりの金融引き締めです。

また、3月18日にはトルコ中央銀行も主要な政策金利である1週間物レポ金利を年19%と2ポイント引き上げました。

この2ヶ国に共通することは、通貨価値の下落によって、輸入インフレが発生し、通貨価値の下落とインフレを押さえ込むために、政策金利の引き上げに追い込まれたことです。

日本でインフレが起こる可能性はゼロでは無い

日本はブラジルやトルコのような新興国とは異なり、通貨安不安も無く、物価も安定しています。

しかし、グローバルの観点から見ると貴金属やエネルギーの価格上昇が国内物価に反映してくることになるでしょう。また米国の金利上昇によって金利差が拡大することで円安になり、輸入インフレの可能性も出てきます。

日本国内でも既に不動産のような実物資産の価格上昇が始まっています。資産インフレが消費者物価の上昇につながることも考えておくべきです。

インフレになる前にインフレ対策を講じておこう

ではもし、日本でもインフレになる可能性があるとしたら、どのような対策を講じておくべきでしょうか。

日本国内のインフレ率が上昇し、それによって円安が進むとすれば、外貨資産の保有が有効な対策となります。

また、インフレになって実質的な価値が下落するのは預貯金です。一方で株式や不動産のようなリスク資産は相対的にインフレに強いと言われています。法定通貨価値の下落と言うことになれば、投資先として暗号資産や金も上昇する可能性が出てきます。

インフレになれば、預金者と同様年金生活者も厳しい立場に追い込まれます。インフレ率が上昇しても年金支給額がスライドするとは限らないからです。

さらに、インフレになるとお金を借りている人が有利になります。物価が上昇しても債務は変わらないため、相対的に借り入れの負担が小さくなるからです。

外貨資産を持ち、株式や不動産のようなリスク資産を保有し、お金を借りる。この3つが将来のインフレ対策として有効です。

インフレが起こってから対策を講じても間に合わない

忘れてはならないのは、実際にインフレが起こってから対策を講じても間に合わないということです。

インフレは、地震と同じようにいつどれぐらいの規模でやってくるかわかりません。しかし、確かなのはどちらも起こってから対策を取っては手遅れだということです。

幸い日本では、まだインフレに関してマーケットの懸念は顕在化していないと考えられます。今のうちにアセットアロケーション(資産配分)を考えながら、インフレ対策をしっかり行っておきましょう。