アクティビストファンドの背後に見られる村上世彰氏の影響力
前回、前々回の記事では、アクティビストファンドの1つとして「シティインデックスイレブンス」の投資先や運用内容をご紹介いたしました。「シティインデックスイレブンス」は旧村上ファンド出身者が運用を主導しており、「南青山不動産」、「レノ」、「エスグラントHD」、「オフィスサポート」などの法人と連携して投資を行っています。
ちなみに、同記事でご紹介しました「エフィッシモ・キャピタル・マネージメント」も旧村上ファンド出身者が主導しており、以前の記事で取り上げた「ストラテジックキャピタル」も同じく旧村上ファンド出身者が率いる投資ファンドです。国内のアクティビストファンドは、村上世彰氏の影響を受けたものが多いようです。
その中でも、村上氏との関係が色濃く見られるのが「シティインデックスイレブンス」です。前回の記事でエクセルの上場廃止に至るプレスリリースでは、液晶を中心とした商社である同社の経営統合について村上氏が議論に加わったとされています。リリースには、村上氏が同業の商社5社程度に対し、エクセルとの経営統合を提案したことが書かれており、その中で前向きな姿勢を見せた加賀電子(8154)との統合に至ったことが書かれています。この説明からエクセルの企業価値を向上させるため、村上氏が主体となって活動されていたことがうかがえます。
また2020年、ホームセンター大手の島忠(8184)に対し、同業の大手DCMホールディングス(3050)が公開買付を実施し、それに対してニトリホールディングス(9843)がより好条件の公開買付を提示して、結果的にニトリが島忠を買収するということがありました。その際にもDCMの公開買付が発表された時点で、もともと島忠に投資していたシティインデックスは島忠に対し、買い手候補を募った上でベストプライスを追求すべきであるとの要望を出していました。結果的に新たな買い手(ニトリ)が現れた経緯は明確でないものの、シティインデックスの影響があったように思われます。
アクティビストが発行株式の37%を保有するフージャースHDの決断
そのシティインデックスが多くを投資している不動産会社の中に、フージャースホールディングス(3284)があります。直近の開示によるとシティインデックスなどは同社の株式の37.15%を保有しているようです。そのフージャースHDが1月28日に気になる発表をしています。複数の発表が出されていますが、その1つ1つを紐解きましょう。
まず、業績を上方修正しています。環境は決して良い状況ではないものの、同社の主力事業であるマンション販売が好調だったとのことで、増配も合わせて発表しています。しかし、何より注目すべきなのは同社が自己株式の取得を公開買付によって行うと発表したことです。同社は過去にヘルスケアリートや再生エネルギーの新事業に乗り出すために資金調達を行っていたものの、環境変化もあって調達した資金の一部が残っており、それらを公開買付に充てるとのことです。
それらの資金をベースに、同社が公開買付に準備した資金は148億円です。第3者意見も取得して同社が妥当と考えている公開買付価格684円で考えると、約2164万株を取得することになります。シティインデックスなどが保有する株数は直近で約2157万株です。この買付株数と図ったかのように似た数です。
実際、シティインデックス自身がフージャースHDと資本戦略を議論する中で保有株の売却意向を示し、この公開買付に至ったとのことですので、シティインデックスの意図に沿った公開買付であると考えてよさそうです。シティインデックスは同社株を2018年に大量取得したと報告し、その後買い増していきました。同時期のフージャースHDの株価推移は以下の通りです。
2020年3月(コロナショック時)の安値が536円ですが、同社株はその後も安値501円をつけています。大量取得報告書で見ても、684円で売却できるのであれば利益が出そうです。4割に近い株数を保有しているという特殊なケースではありますが、上手い売り抜け方ができた印象を受けます。しかし、これも恐らくそのような出口の確保も考慮し、約16%の株を握る経営者の姿勢や、同社の事業や資産など経営状況をよく考えた上で投資をしているということなのでしょう。このような意味においてもアクティビストがどのような企業に、どの程度の株価で投資を進めているかを調べることは、投資判断の参考になると思います。