配当は修正される可能性があるうえ、決算短信を確認してから株式を買ったのでは配当の権利を取得するのに間に合わないケースがほとんどです。今回は、配当を確実に手に入れるために会社の配当方針を確認する方法を取り上げます。
株主還元の指標として、純利益のうちどのぐらいを配当に回すかを示す「配当性向」があります。連結配当性向85%を“公約”して新規上場したソフトバンク(9434)を以前の記事『IPO銘柄の配当利回りの算出とは』で紹介しました。
累進方針に注目:前期の配当を維持か増額
ここ数年、前年度以上の配当を続ける「累進配当」を打ち出す会社も出てきました。三菱商事(8058)は2016年5月に開示した「中期経営戦略2018」で「持続的な利益成長に合わせて増配していく累進配当」を基本方針にすると宣言しました。(図表1参照)「中期経営戦略2021」でも「持続的な利益成長に合わせて増配していく『累進配当』を継続」する方針を示しています。(図表2参照)
いちごグループホールディングス(現いちご(2337))は2016年4月に累進的配当政策の導入などを開示した資料で、「原則として『減配なし、配当維持もしくは増配のみ』を明確な方針とする累進的配当政策は、持続的な価値向上に対する企業から株主へのコミットメント」と主張しました。2019年4月に長期ビジョン策定を開示した資料で累進的配当政策の継続を表明しています。
伊藤忠商事(8001)や三井住友フィナンシャルグループ(8316)も累進配当政策を推進中です。配当性向は配当額が利益に左右される可能性があるので、累進配当の方が強い決意表明と言えるかもしれません。もちろん明確に宣言しなくても前期以上の配当を続ける会社もあります。
ただ、新型コロナウイルス感染拡大による先行き不透明感から日本エスコン(8892)は2020年7月、累進的配当政策を見直すと開示しました。(図表3参照)配当は株式を保有すれば予定通りに手に入るわけではありません。不断の情報収集と行動が欠かせないのです。
この連載では配当について解説してきましたが、本記事で更新は終了となります。