現在上場しているのは伊藤園のみ
配当利回りに関する知識として優先株式について解説します。株式会社は剰余金の配当について内容の異なる種類の株式を発行できます。種類株式の1つに「優先株式」があります。東京証券取引所に上場されているのは伊藤園が発行する第1種優先株式だけです。
伊藤園の普通株式の証券コードは2593、第1種優先株式は25935です。同社の決算短信によると、2020年4月末時点で自己株式を除く発行済み株式数は普通株式8,818万8,913株に対し、第1種優先株式は3,305万4,872株です。
普通株式との配当利回り差約3.5倍の事例
伊藤園の第1種優先株主は、株主総会で議決権を行使できないものの、普通株式の1.25倍の優先配当を受け取ることができます。具体的に2020年4月期の配当を見てみましょう。(図表1参照)
普通株式の配当が中間20円、期末20円で年40円だったのに対し、第1種優先株式の配当は中間25円、期末25円で年50円でした。2021年4月期についても普通株式が年40円、優先株式は年50円という配当予想を示しています。
伊藤園が2020年4月期決算を開示した翌日の2020年6月16日の株価をみると、普通株式の終値は6,090円で、優先株式は2,121円でした。優先株式の方が高配当なのに、株価は3分の1程度の水準です。配当利回りは、普通株式0.65%(小数点第3位切り捨て)に対し、優先株式は2.35%(同)です。
優先株式の株価を形成する要因:議決権と流動性
普通株式と優先株式の価格差は議決権の有無を反映したとみることができるでしょう。また売買高も大きく異なります。
東証の月間株式相場表によると、決算発表のあった2020年6月の月間売買高は普通株式が739万9,400株に対し、優先株式は20万7,700株でした。いつでも売り買いできる流動性も株価形成に影響しているとみられます。
議決権が無くても、流動性が低くても構わないという投資スタンスで、単純に配当利回りだけを比べると優先株式が普通株式より有利という事例を参考までに紹介しました。