少しタイミングが遅くなりましたが、新年明けましておめでとうございます。本年も本コラムをどうぞよろしくお願いいたします。
さて、米国の主要株価指数は史上最高値を更新し、日本でも日経平均株価が約30年ぶりの高値水準で推移しています。
また、暗号資産の代表格であるビットコインは年末年始に急騰し、一時日本円換算で430万円台まで上昇しました(その後1月11日には、350万円台まで急落しています)。
不動産価格も、世界的に居住用物件を中心に堅調な推移となっており、「資産インフレ」の可能性を指摘する人が増えています。資産インフレとは、日用品や食品のような消費者物価が上昇するのではなく、投資対象となる資産の価格が上昇していく状態を言います。
なぜ今、資産インフレが懸念されるのか
このように金融資産・実物資産ともに資産価格が上昇しているのは、裏返せば日本円や米ドルといった国が管理している法定通貨の価値が下落している結果であると見ることもできます。
2020年から新型コロナウィルス感染拡大を受け、世界各国が大規模な財政支出を発動し、その資金が市場に流れ込んでいます。
通貨供給量が増えることにより、その価値が相対的に低下し、資産価格が上昇(資産インフレ)しているように見えるのです。
これは法定通貨の価値低下を懸念する人たちが、貨幣を手放し、リスク資産を購入する方向に動いていることを示していると考えられます。
希少性のある資産に資金が流れ込む
資産価格は、最終的に需要と供給の関係によって決まります。とすれば、供給が限られている資産は、需要が拡大することによって価格が上昇しやすいことになります。
例えば、暗号資産のビットコインは、発行量の上限が2100万BTCと決まっています。供給はマイニングによってしか増えることはなく、半減期と呼ばれる4年に1回の周期でマイニングによって得られる報酬が半分に減ってしまいます。
つまり、時間が経てば経つほど供給量が少なくなります。一方で、保有する人が増えれば価格が上昇することになります。
これまでは個人投資家の短期売買で価格が形成されてきた暗号資産ですが、最近は年金基金等の機関投資家も購入意欲を高めているとも報じられています。
暗号資産が株式や債券と同じように、アセットクラスの1つとして認められれば、ポートフォリオの一定比率を長期的に保有するようになることが予想されます。これは需要をさらに拡大する要因だと考えます。
暗号資産は変動率が大きく、リスクの高い資産ですが、長期的に希少性が高まるという側面は否定できません。
資産インフレで拡がる経済格差
資産インフレは今後も続くと予想されます。各国がさらに財政支出を拡大し、貨幣の供給量を増加させれば、法定通貨の価値はさらに下落していくと考えられるからです。
その結果、リスク資産を保有している人と保有していない人の資産の増減に差が開き、経済格差がさらに拡大していくことが予想されます。
まとまった資産を保有している人であっても、それが預貯金や現金に偏っていると、資産インフレの恩恵を受けることはできず、貨幣価値の下落に巻き込まれかねません。
資産インフレに備えるには
資産インフレに備える方法としては、自分が保有している資産を株式や暗号資産、さらには不動産などのリスク資産に振り向けることを検討することがまず第一歩になります。
ただし、株式や暗号資産は変動率(ボラティリティ)が高く、株式の個別銘柄になると、その変動率はさらに高まります。また、タイミングを考えて購入すると高値掴みになりがちです。
株式投資は投資信託を使ったインデックス運用の積立を基本とし、ドルコスト平均法で運用するのがオーソドックスな資産インフレの対策となるでしょう。
暗号資産に関しても、ビットコインを中心に他の主要な暗号資産も分散して保有するようにしましょう。こちらも定期的に購入することで、時間とリスクを分散することが大切です。
世間ではここに来て、暗号資産への投資に興味関心が高まっているようです。これは、法定通貨の価値下落を懸念する人が増えてきたからかもしれません。
現金や預金を投資に振り向けることには、当然リスクを伴います。
しかし、預貯金に資産が偏っていることも資産インフレに対応できないという点で「リスクを取らないリスク」があることを念頭に置きながら、資産インフレに備えていただければと思います。