独身・既婚にかかわらず、「いつかは子どもを産みたい」と思っている女性は少なくないのではないでしょうか。ただ、女性の社会進出が進み、晩婚化していることやハードワークで体調を崩してしまうなど、「いざ子どもが欲しい!」と思っても、思うように妊娠できない可能性があります。

実際、年々不妊治療を受ける人は増えており、菅内閣でも不妊治療の保険適用を打ち出しています。そこで今回は、不妊治療にかかるお金と助成制度についてお話します。

ぜひ、将来の参考にしてくださいね。

不妊治療はステップが上がるほど高額に

今の時代、社会で活躍する女性が増えてきています。その影響もあり、年々女性の初婚年齢が上がっています。厚生労働省の調べによると、2018年時点で女性の初婚年齢は29.4歳とのこと。その後、出産するとなると、ほとんどの人が30代以降で出産することに。私自身も38歳で子どもを産みましたが、年齢が上がるとなかなか妊娠しづらくなるのが現実です。周囲を見渡しても不妊治療をしている人は多く、昔に比べて不妊治療は身近なものとなってきました。

ただし、一度不妊治療に足を踏み入れると、諦めきれず、気がついた時には、治療費に莫大な金額を費やしていた…というのは、珍しくないケースです。ですから、今のうちから、将来もし不妊治療をすると、どれくらいお金がかかるのかを把握しておきましょう。

不妊治療には、タイミング法、人工授精、体外受精、顕微授精など段階があり、高度なものになるほど、費用も高額になる傾向にあります。

以下、主な治療方法と費用を見ていきましょう。

タイミング法

超音波(エコー)で卵巣内にある卵胞の大きさを測ったり、尿中の排卵ホルモンを検査し、排卵日のタイミングに合わせて自然妊娠を期待する方法です。身体への負担が少ない方法で、まずはこの治療から始められることが多いです。

こちらの治療は、健康保険が適用になるので、費用は3割負担。1回あたり数千円程度が一般的です。

人口受精(AIH)

タイミング法で妊娠しなかった場合、運動している成熟精子を、妊娠しやすい時期に子宮内へ直接注入する方法です。排卵誘発剤を併用する場合は、多胎妊娠や卵巣過剰刺激症候群(卵巣内の卵胞が過剰に刺激され、卵巣が膨れ上がることで様々な症状を引き起こす症状)などの体調への影響にも注意が必要です。また、6回程度行っても妊娠しない場合は、それ以上行っても同じ結果になると判断されることが多いようです。

こちらの治療は自由診療のため、費用は全額自己負担です。1回あたり、1万円〜4万円程度ですが、病院によっても金額は変わります。

体外受精・顕微授精(生殖補助医療)

身体から取り出した卵子と精子を体外で受精させ、数日後に受精卵を子宮に返す方法です。女性の身体には少なからず負担がかかり、卵巣過剰刺激症候群などの体調への影響もあります。

費用は全額自己負担で、1回20万円〜60万円が目安です。ただし、治療内容と病院によってかなり差があります。

高度治療には、助成制度がある

体外受精・顕微授精は費用が高額ですが、厚生労働省が「特定治療支援事業」を行っており、治療費の一部が助成されます。1回15万円(初回は30万円)が上限ですが、採卵を伴わないものは7万5000円(初回は15万円)が上限になります。ただし、いくつかの条件があります。これから治療を始める場合の条件は次の通りです。

  1. 体外受精・顕微授精以外の治療法では妊娠の見込みがないか、可能性が極めて少ないと診断された
  2. 法律上の結婚をしている夫婦(事実婚は対象外)
  3. 夫婦合算の所得が730万円未満(「収入」ではなく「所得額」がポイント)
  4. 治療開始日の妻の年齢が43歳未満
    ※ただし、新型コロナウイルスの影響で今年度に限り44歳未満

そして、助成を受けられる回数の上限があります。治療開始日の妻の年齢が40歳未満なら6回、40歳以上の場合は3回までです。

制度の変更はたびたび行われています。初めて助成を受ける年度によって、対象になる範囲や回数などが変わりますので、注意が必要です。また、上記の厚生労働省の制度に金額や回数を上乗せしている自治体や、健康保険組合もあります。追加で助成が受けられないか調べてみましょう。

投資も視野に将来に向けてお金を増やす

不妊治療を受けている方たちにお話を聞いてみると、1回の治療で成功するというのは稀なケースのようです。

子どもが欲しいという気持ちはなかなか諦めきれるものではなく、「もう少し頑張ろう、次こそは成功するのではないか」という具合に、費用がかさむ傾向があります。

また、病院・クリニックでの治療費や通院費用以外にも「できるだけ、効果を高めたい」と、体質改善のためのサプリメントや漢方を常用したり、ヨガ教室に通ったりする人もいるようです。これらの費用を足すと、これまでの私がお受けした相談事例では「平均200万円以上」かかっている人も少なくありません。

いざ、不妊治療をするとなった時にお金がなくて諦めなくてはいけないのは残念なことです。仮に不妊治療をしないとしても将来に向けて少しでもお金を増やしておくにこしたことはありません。

ただし、現在の大手都市銀行の普通預金の金利は0.001%と超がつくほどの低金利です。100万円を1年間に普通預金に預けていてもほとんどお金は増えません。

また、現在、日本銀行は2%のインフレ目標に向かって邁進しているようです。現在のインフレ率は1%程度のようですが、仮に以下の図表の通り、物価上昇率が2%になった場合には、10年後には817万円、20年後には667万円、30年後には545万円、40年後には445万円の価値しか無くなってしまいます。

【インフレによる現金価値変化】
※1000万円 ×インフレ率を年数分掛け合わせて算出(普通預金金利は0%で計算)
出所:筆者作成

そのため、私たちのお金も資産運用をするなどして、物価が上昇する分を増やしていかないと、実質資産は目減りしてしまうことになります。今後は、投資も視野に入れて将来のためにお金を増やしていきましょう。