マネクリにてご執筆いただいておりましたオフィス・リベルタス 創業者 取締役、大江 英樹 氏が2024年1月1日にご逝去されました。心より哀悼の意を表し、ご冥福をお祈り申し上げます。
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個人型確定拠出年金(iDeCo)は、各運営管理機関が提示する運用商品の中から、自分で商品を選んで毎月購入することになる。その内容を変更することはいつでも可能だ。しかし、長期運用することを考えるとやはり、一定の運用ポリシーに沿って自分のポートフォリオを決定しておくことが大切だろう。
よく投資初心者の方から「難しいことはどうでもいいので、一番儲かる商品を教えてください」と聞かれることがある。そう聞きたい気持ちはわかるが、これはあまり意味のない質問のように思う。なぜなら、未来を見通せる水晶玉はどこにも存在しないからだ。
ただ、商品選びにあたって考えておくべき点はいくつかある。それらを確認しておこう。
自分のリスク許容度を知る
まずは自分のリスク許容度を知ることが大事だ。これは価格の変化にどれぐらい耐えられるかということである。ここで言う“耐えられる”というのは経済的な意味と精神的な意味がある。
ただ、多くの人にとってiDeCoは自分の財産の全てではないだろうし、1年や2年といった短期間での運用ではない。したがって、iDeCoでの運用はある程度リスクを許容できるものではないだろうか。
分散投資を考える
リスクを取ることをある程度許容し、投資信託のような価格変動商品を運用する場合、分散投資しておくことは基本だろう。どのカテゴリーの資産が今後上昇するか、どの地域や国の株式市場が成長するのか、先のことは誰にもわからない。そのため、複数の投資信託に分散して配分するか、あるいはひとつの投資信託で幅広く世界中の市場に分散投資できるバランス型のような商品を購入するのが良いだろう。
期待リターンの高いものを優先する
iDeCoの運用益に対する課税は繰り延べされる。したがって、できるだけ期待リターンの高い物で運用するのが基本だろう。わかりやすい例で言えば、全店全ての商品が半額セールをやっている家電量販店で、電池1個だけを買うという人はあまりいないだろう。全て半額なのであれば、普段買いたいと思っていた高額商品を買う人が多いはずだ。
iDeCoのように運用益に税金がかからないものであれば、投資信託のように値上がりの可能性のあるものを優先的に選ぶのが合理的だと言えよう。
多くの人にとってiDeCoは自分の持っているお金の全てではなだろう。例えば定期預金を持っている人も多いだろう。iDeCoは60歳まで引き出すことができないのだから、iDeCoで定期預金を選ぶメリットはあまり無い。
前述のようにiDeCoでは期待リターンの高いものを選ぶのが基本であるから、iDeCoを含めた自分の資産全体で分散投資ができていれば、iDeCoの中では特定のカテゴリーに集中していても、あまり気にすることはない。
このようなポイントを考えながら自分に合ったポートフォリオを組めばいいわけだ。前述したように分散投資をおこなうのであれば、一般的には伝統的な4資産(国内株式、国内債券、外国株式、外国債券)に均等配分する、あるいは株式だけのポートフォリオであれば、世界の市場の時価総額の規模に合わせて配分するというパターンが良いだろう。
もちろん伝統的な4資産に加えて、新興国の株式や債券、内外のREIT等を組み合わせる等で8資産に配分するパターンを考えるのも良いだろう。
コストの安い商品を選ぶ
どんなポートフォリオを組むにせよ、同じカテゴリーの中で比較した場合、できるだけコストの安い、すなわち信託報酬の低いものを選ぶことも重要だ。なぜならiDeCoでの運用は10年~30年といった非常に長い期間になる。表面的にはわずかな手数料率の違いであったとしても、長期間では大きな差になってくるからだ。
iDeCoで運用する商品を選ぶのはあくまでも自分自身であり、これが唯一の正解という方法は存在しない。ただ、ここで述べたような「iDeCoの商品選びで意識しておくべきこと」については、ポイントを押さえておいた方が良いのではないだろうか。