個人型確定拠出年金(愛称:iDeCo)が始まったのは2001年だが、2017年に制度が改正になったことで加入者が大幅に増え、現在では170万人を超えるまでに増加している。

増加の背景は加入できる対象者の範囲が拡がったことにある。それまでの16年間は、加入できる対象者は1号被保険者(自営業、フリーランス、無職、学生等)の1,471万人に加え、企業年金のない民間企業に勤めるサラリーマン約1,800万人(推計)を合わせた約3,300万人が対象であった。

それが、2017年の法改正によって原則は国民年金に加入している人であれば誰でも加入できるようになった。その数は6,745万人に及ぶため、iDeCo加入者も一挙に倍増したわけだ。

加えて行政だけでなく、民間の金融機関も大々的に制度の拡大を告知したことによって、それまでの15年間で30万人程度しかいなかった加入者が、その後の3年間で一挙に5倍以上に増えたのである。

国民年金加入者なのにiDeCoに加入できないパターンとは?

国民年金加入者なら誰でも入れるということは、原則は20歳以上60歳未満であれば加入資格があることになるので、その年齢に該当する人なら誰でも入れると考えるだろう。

ところが現実には、加入できる資格があっても、なぜか加入できない人がいるということも事実なのである。これは一体どういうことなのだろうか。

結論から言えば、民間企業に勤めていて「企業型確定拠出年金」に加入している人は事実上、加入することができなかったのである。なぜなら、「企業型確定拠出年金」を採用している企業の社員がiDeCoに加入するためには、会社が自社の制度に少し手を加える必要があるからだ。

具体的に言うと、確定拠出年金には掛金額に上限が決められている。企業型の場合、最も多い場合で上限は月額5万5千円(※1)だ。一方、iDeCoの掛金上限額は、この例のように企業型確定拠出年金のある会社に勤めている場合は最高でも月額2万円が上限となる。

ここで仮にこの会社に勤めている人がiDeCoに加入し、自分で積み立てられる上限一杯の2万円を積み立てたいと思ったらどうなるだろう。iDeCoの掛金と企業型確定拠出年金の掛金を合計して5万5千円を超えることはできない。したがって、この場合、会社が出す掛金の上限は2万円を引いて3万5千円に減らさなければならない。

つまり、個人が掛金を出すことで会社の掛金負担が減ることになる。会社としてはありがたいだろう。しかし、iDeCoに加入するつもりのない人まで会社が出してくれる掛金を減らされてしまうのであれば、これは(人によって)とても迷惑な話になりかねない。

しかもそれを決めるためには労使で合意した上で、規約を変えなければならないため、これではまず労働側から合意を得ることは難しいだろう。したがって今までは建前上は加入できることになっていても、現実には不可能だったのである。

事実、企業型の確定拠出年金を実施している会社で社員にiDeCoの加入を認めているところは、わずか3.6%しかない。

iDeCo制度の改正で、より利用しやすく

ところが今回(2020年5月成立)の法改正では、「規約を変更しなくてもよい」ことになった。これにより、会社が出している掛金の額と上限の企業型の上限5万5千円の間に枠の余裕があれば、その分、個人がiDeCoに加入して自分で自由に掛金を出すことができるようになったということだ。(もちろん上限は2万円なので、それ以上は出せない)

現在、企業型確定拠出年金に加入している人は全国で約750万人いるが、これらの多くがiDeCoに加入できるようになるメリットは大きいと言えるだろう。読者の中にはiDeCoに入りたいと思って会社に聞いても、「それはできない」という答えが返ってきたこともあるかもしれないが、それにはこういった背景があったのだ。

また、iDeCoの加入は60歳までが原則だが、サラリーマンで60歳以降も再雇用で働き、厚生年金に入り続けるのであれば、iDeCoも65歳まで積立を行なうことができる。

但し、気をつけなければならないのは、「iDeCoは、受給と積立を同時にはできない」ということだ。そのため、60歳になって受給し始めた場合は積立することはできないことに注意が必要だ。

これらの改正が施行されるのは内容によって少し時期が異なるが、2022年10月からは全てが出揃うことになる。現在は加入できない750万人に加え、60歳以降も働く人が増える中、自分の老後の備えとしてのiDeCoを活用する人が益々増えるのではないだろうか。

(※1)他に企業年金制度が無い会社の場合