株高・米ドル安が展開した背景

 2020年3月に「コロナ・ショック」が広がる中で、FRB(米連邦準備制度理事会)は究極の利下げ、政策金利をゼロまで引き下げるゼロ金利を決めた。その上で、資金供給を拡大する量的緩和(QE)も拡充に動いた。

こういった中で、世界的な株大暴落、「コロナ・ショック」は、3月末までに一段落となった。しかし、反発に向かった株価とは対照的に、為替は基軸通貨の米ドルが対円以外では一段安となったのだった。「コロナ後」の株高・米ドル安。じつは、それはかつてと似た動きでもあった。

「リーマン・ショック後」がまさにそれだろう。「100年に一度の危機」とされた「リーマン・ショック」、しかし株価は、2009年3月には底を打ち、反発に向かった。ところが、そんな株価反発を尻目に、米ドル/円は2011年10月にかけて1米ドル=75円まで一段安となった。

なぜ、「リーマン・ショック」後は、間もなく株高・米ドル安となったか。それは、経済対策としてのFRB金融緩和が奏功した結果の株高、一方で金利低下に伴う米ドル下落といったことだったのではないだろうか。

私が言いたいのは、「コロナ・ショック」後の株高・米ドル安と、「リーマン・ショック」後の株高・米ドル安は似ているということ。まさに「コロナ後」の相場は、「リーマン後」の経験と知識が役立つものだったといえるだろう。

それにしても、なぜ「コロナ後」、米ドルは対円では小動きが続いたのに対し、円以外の通貨に対して大幅に下落したのか。それを考える上では、「キャリー取引」という言葉を検証する必要があるかもしれない。「キャリー取引」とは、ヘッジファンドなどに流行した、安く調達した資金を、為替リスクを活用し高い利回りで運用する方法とされる。

これが大流行したケースの一つが、まさにリーマン・ショック後だった。そこで、株高・米ドル安となった。これを参考にすると、「コロナ後」の株高・米ドル安も「先読み」しやすかったのではないか。

それにしても、「コロナ後」は、上述のように対円では米ドル安も限られた。ではそれはなぜか。そもそも、安く調達し、高い利回りで運用するといった「キャリー取引」の代表は円だった。その大前提、世界一の低金利通貨、円といった状況は、今も著変ない。ということは、最近も米ドル・キャリーとともに、円キャリーも相応にありそうだ。

米ドル・キャリーとは米ドル売り運用、そして円キャリーとは円売り運用。リスクオンの株高局面で、米ドル売りと円売りが綱引きになる結果、米ドル/円は方向感がない展開になったということではないか。