選挙前小動き、選挙後大相場の「もう一つの理由」
11月の米大統領選挙が近付く中で、米ドル/円は方向感のない小動きが続いている。ところで、これは米大統領選挙前としては「いつものことだ」ということをこれまで何度か説明してきた。その上で、そんな方向感のない小動きは、あくまで選挙前までのことであり、選挙前後からは一転、一方向への大相場へ「豹変」を繰り返してきたのである。
これを私は、論理的な説明が困難ながら繰り返されるパターンといった「アノマリー」として紹介してきた。ただし、あえて「理屈」を考えるなら、以下のようなこともあるのではないかと思っている。
選挙前のマーケットが、選挙結果に影響しないように、変動を極力抑制しようとするといった影響。普通に考えて、選挙前に株価が暴落すると、現職には不利に影響しそうだし、逆に株価の急上昇は、現職に有利に影響しそうだ。マーケットが、政治的に中立を維持するためには、大幅な変動がないにこしたことはないだろう。
しかし、そんな反動の影響なのか、大統領選挙が終了してから、間もなく、金融市場に重大な影響を与えそうな発言が飛び出したことがあった。代表例は、1996年ではないか。11月の大統領選挙でクリントン再選が決定、そして約1ヶ月後に、当時の米連邦準備制度理事会(FRB)議長のグリーンスパン氏による「この株高は根拠なき熱狂なのか」といった発言が飛び出した。
これは、株高の行き過ぎを警告した発言だったが、それが大統領選挙後のタイミングで飛び出したのは、これまで見てきたように、選挙前に株価が大幅に変動することにより、大統領選挙への影響回避を配慮したといったことがあったのではないか。
最近も、「コロナ後」の景気回復の鈍さを尻目とした株高へ、「行き過ぎ」を警戒する見方はある。それに対して、政策当局者から強い警告は、これまでのところないが、大統領選挙を前後してそんな姿勢が急変する可能性も、一応要注意かもしれない。