前回の記事では、優良子会社を保有している親会社にはアクティビストなど投資家からのプレッシャーが厳しくなるという話を書きました。パソナグループ(2168)は自社の時価総額が600億円程度ですが、子会社ベネフィット・ワン(2412)株を2000億円程度保有しており、パソナ株主としてはその株式の有効活用によってパソナの価値がもっと上がるだろうと考えるからです。

ソフトバンクGは保有株式売却によって株価を回復

このように、子会社の価値が親会社に還元されていない例として有名なのはソフトバンクグループ(SBG、9984)でしょう。SBGは自社のウェブサイトのトップページに「一株あたりの株主価値情報」へのリンクを設け、同社が保有するアリババ、Tモバイル、国内通信のソフトバンク、アームなどの保有株式の価値を合算した保有株式は1株あたり14,582円とし、そこから負債を除いた1株あたり12,973円が株主価値であると示しています(2020年8月11日現在)。同社の株価はこの半年ほどで大きく上昇したものの、6,000円程度の水準で、本来の価値はその倍であるということを示したいのでしょう。同社の決算説明会でもこのような説明をされています。

2020年3月、世界的に株価が暴落する中でSBG株は2,600円台まで売り込まれました。2月末には5,000円を超えていたので実に半値近くまで売られたわけです。そしてSBGは同社の保有する株式を売却し、現金を調達し、有利子負債を削減する方針の発表に追い込まれました。しかし、マーケットはそれを好感。7月には株価が7,000円を超え、2020年来の高値へと回復します。

マーケット全体やハイテクセクターの株価上昇が追い風になっていると思いますが、保有株式の売却の発表が株価上昇の原動力になった面も大きいでしょう。SBGの場合は、環境や株安がプレッシャーとなったわけですが、同様のプレッシャーをかけて会社の価値をあげようと考えている投資家も少なくありません。

親会社株に対して子会社株の価値が高い銘柄

SBGと同様に、子会社株の価値が親会社株に対して高い銘柄は、他にどのようなものがあるでしょうか。

その代表的な例は京成電鉄(9009)とオリエンタルランド(OLC、4661)でしょう。京成電鉄は東京ディズニーランドの開園時からOLCに出資しています。京成はOLC株の20%を保有しており、評価額は約1.1兆円と京成の時価総額5400億円を大幅に上回ります。

GMOインターネット(9449)も子会社を多数上場させており、それらの株式を保有しています。同社の時価総額が3000億円であるのに対し、GMOペイメントゲートウェイ(3769)の保有株式(42%)の評価額は3200億円です。

リクルートHD(6098)株を過去のつながりで印刷会社が保有していることもよく知られています。凸版印刷(7911)は4.2%のリクルートHD株を保有しており、評価額は3000億円、凸版の時価総額は5300億円です。

リクルートのように保有株が上場することで価値が高くなる例は少なくなく、メルカリ(4385)株の5.5%(評価額400億円)を保有するユナイテッド(2497)はメルカリの上場時に大きく株価が上がりました。現在のユナイテッドの時価総額は300億円となっており、メルカリ保有分を下回っています。

同じように上場前から投資していた株式が上昇している例として、アイペット損害保険(7323)株の56.2%(評価額130億円)を保有するドリームインキュベータ(4310)も挙げられるでしょう。ドリームインキュベータの時価総額は150億円です。

地方銀行に見られる意外な例

意外とおもしろいのが地方銀行です。地銀の将来性を悲観する声は少なくありません。しかし、地方銀行が過去に投資した会社が成長しているケースも多く見られ、地方銀行の時価総額に対し、その投資先の評価額が非常に大きくなっています。

例えば、ニトリHD(9843)株の3.3%(評価額800億円)を北洋銀行(8524)、信越化学工業(4063)株の2.8%(評価額1600億円)を八十二銀行(8359)、ユニ・チャーム(8113)株の2.4%(評価額650億円)を伊予銀行(8385)が保有しています。

任天堂(7974)株の3.7%(評価額2900億円)、日本電産(6594)株の4.1%(評価額2300億円)、村田製作所(6981)株の2.3%(評価額1000億円)を保有する京都銀行は“京都のバフェット”といった趣さえ感じられます。

マネックス証券のウェブサイトのスクリーニングではすべての上場銘柄を時価総額順に並べることができます。定期的に時価総額上位の会社を確認し、四季報でその大株主をチェックし、優良株を保有している会社を探すのは意外と楽しい作業です。ぜひ、お試しください。