八重洲の大規模再開発は着々と進行中
日本の玄関口でビジネスの中心地でもある東京駅に降り立つと、八重洲中央口の目の前で雲に届くほどの巨大な高層ビルの建築が進められています。
「東京駅前3地区再開発」のひとつで最も大きな規模となる「八重洲二丁目中地区」の再開発事業です。三井不動産(8801)が中心となって2024年8月に着工され、2029年1月に竣工の予定です。
完成すれば大規模なオフィスや商業施設はもちろん、インターナショナルスクールや劇場、アパートメント、バスターミナルまで備えた一大プロジェクトとなります。すでに「東京ミッドタウン八重洲」がオープンしていますが、丸の内側と比べて小ぶりの商業ビルが多かった八重洲側の風景ががらりと変わります。
「三井不動産が中心となって…」と述べましたが、関係する企業はほかにも鹿島建設(1812)、住友不動産(8830)、ヒューリック(3003)、独立行政法人都市再生機構、阪急阪神不動産の6社で運営されています。
出社回帰の流れで空き室率低下、賃料上昇
東京都心のビジネス街のオフィス市況は空前の活況を呈しています。オフィス仲介で60年の歴史を持つ三鬼商事の調べでは、2025年3月時点の東京都心5区(千代田区、中央区、港区、新宿区、渋谷区)の空室率は平均で3.86%、前月比で▲0.08ポイント低下しました。
2024年3月の同じ地区の空室率は5.47%でした。そこから6月には5.15%、9月は4.61%、12月は4.00%と一貫して低下を続け、現在は3.86%となっています。3月には大規模ビルが2棟竣工しましたが、オープン当初から満室、高稼働だったことも空室率の低下につながっています。
オフィス賃料も上昇しており、同じ地区の3月の平均賃料は20,641円(坪単価)と、前年同月比+4.14%(+821円)、前月比+0.78%(+160円)、どちらも上昇しています(三鬼商事)。オフィス市況が好調の背景には、出社回帰の流れがあります。ビジネスが好調で都心部に人が回帰している現状が見てとれます。
2024年の不動産投資額は10年ぶりの高水準
不動産大手の森ビルが、東京23区に本社を置く企業(従業員300人以上)に対してアンケートを取ったところ、2024年の出社率は平均で78%に達しました。前年から+2ポイント増えています。
反対にリモートワーク(在宅勤務)を導入している企業の割合は▲2ポイント減の74%でした。在宅勤務ではコミュニケーションやエンゲージメントに問題を感じる企業が増えており、それが出社を求める企業の増加につながっているようです。
労働人口が減り続けている日本では、魅力的なオフィスにしないと優秀な働き手が集まらないという問題があります。世界のオフィスビル投資では、これまではまず米国、次いで中国、という順番でしたが、中国の対外政策が自由主義社会と距離を置くようになるにつれて、日本・東京の地位が高まっています。
日本はいまだ金利が低く、賃料の上昇も継続していることからオフィスビル投資の魅力が高まっています。2024年の日本の不動産投資額は10年ぶりの高水準でした。この流れはまだしばらく続くと見るべきでしょう。
オフィスビル投資関連銘柄4選
オフィスビル投資に関連する企業を挙げてみます。
三井不動産(8801)
三菱地所と並ぶ総合不動産の双璧。オフィスビルの賃貸管理が主力事業だが、マンション、商業施設、海外事業にも力を入れる。オフィスビルは東京・日本橋を拠点として東京都心5区を中心に展開。日本橋室町三井タワー、霞が関ビルディング、東京ミッドタウン(六本木)、東京ミッドタウン日比谷、日本橋髙島屋三井ビルディングなどを有する。商業施設では「三井アウトレットパーク」、「ららぽーと」でも知られ、総テナント数は3,000社にも達する。

三菱地所(8802)
三井不動産と並んで総合不動産のトップクラス。東京大手町・丸の内を中心に30棟のビルを保有。1998年から20年を費やし「丸の内再構築」を計画。ほぼすべてのビルのリニューアルを終え、現在は大手町を中心に連鎖型の都市再生プロジェクトを推進している。保有物件は丸の内ビル、新丸の内ビル、丸の内オアゾ、大手町パークビルディング。東京駅北口(日本橋口)前に「TOKYO TORCH」を建設中で、完成すれば390メートルの日本一の高さを誇るビルになる(2027年度の竣工を予定)。

三機工業(1961)
三井系の総合設備工事大手。事業の中核はオフィスビル、工場向けの空調設備の工事で、ほかにもスマートビル、ファシリティマネジメント、電気、衛生、情報通信、オフィス移転などの建築設備全般から、搬送システム、コンベヤ、上下水処理施設、ごみ焼却施設の環境システムなどカバー範囲は広い。オフィスのレイアウト作成は専門スキルが必要で困難な分野とされているが、同社はDXを駆使してこの作業を自動化するシステムを研究・開発している。

オリックス不動産投資法人 投資証券(8954)
2002年に日本で最初の総合型REITとして登場。すでに20年以上の実績を持つ。所有物件は117件で、オフィス、商業施設、住宅、物流施設、ホテルなどに分散。このうちオフィスが54.5%を占める。いずれも稼働率は97~100%に達する。資産規模は7229億円。年間の予想分配金は8,270円(2025年2月期:3,880円、2025年8月期:4,390円)としており、3月時点の利回りは4.6%となる。主な物件は、アークヒルズ サウスタワー、ラウンドクロス秋葉原、代々木フォレストビルなど。
