7月のコラムでは、主要国で超低金利政策が続くなか、為替ヘッジ付投資商品の魅力が高まっていることをお伝えしました。

身近な投資商品としては投資信託があげられますが、その為替ヘッジについてもう少し詳しく見ていきましょう。

一般的な為替ヘッジの方法としては、以下の3つがあります。
・ 先物為替予約
・ 為替スワップ取引
・ 為替オプション取引

いずれも基本となる「コスト」は2国間の金利差がベースになります。冒頭で触れたように、主要各国で超低金利政策が続いているため、対主要国通貨の金利差はほとんどない程度まで縮まっており、そのヘッジコストは極めて低くなっているのが現状です。

先物為替予約

直物為替+2国間金利差から計算される「直先スプレッド(スワップポイント)」=先物為替
です。先日付受け渡しの数量、為替レートをあらかじめ決めておく取引です。

為替スワップ取引

直物為替と先物為替の売買を同時に組み合わせて行う取引です。為替ヘッジを利用する場合は、外貨を購入し、先日付でその外貨を売るという取引になります。

例えば直物為替で調達した外貨で外国債券を購入し、その債券を売却した外貨を先物為替予約により円に戻します。外貨の「買って売り」のスワップをロールオーバーすることで、受け渡し期日を先送りすることができます。

いずれも為替市場の動向を見据えて機動的にヘッジを入れることで効果が得られます。

上述の為替スワップ取引の例として外国債券投資を挙げましたが、為替取引を行うタイミングによっては無意味になる場合もあります。

例えば米国債の発行時から満期時に合わせて為替ヘッジをしてしまうと、金利差によるヘッジコストは債券利息分と相殺され、理論上は日本国債に投資するのと同じ意味合いを持つことになります(もちろん投資信託の運用会社がそうした無駄な取引を行う心配はありませんが)。

為替オプション取引

為替オプションを利用したヘッジ方法です。

先日付の「外貨を売る権利」である「プットオプション」を購入し、コストを支払うというのも1つの方法ではありますが、他の方法として「カバード・コール戦略」というものがあります。それは「原資産(外貨)の買い」と「コールオプションの売り」を組み合わせる手法です。

コールオプションというのは、一定条件の下で先日付の外貨の「買い」を約束する権利です。したがって、その権利を売るということは円安に進んだ時(為替差益が受けられる状況)に、その時点では不利となるあらかじめ約束された為替レートで外貨を購入しなければならないということです。その代わり、オプション売却によるオプション料(プレミアム収入)を受け取ることができます。

もし為替市場が結果的にそれほど円安にはならず、オプションも行使されなければ、プレミアム収入はそのまま利益になります。大幅に円高が進んだ場合は、先に受け取ったプレミアム収入が為替差損分の一部補填になり、為替ヘッジの作用となります。

いずれの手法を用いても為替ヘッジをつけるということは、市場が円安に進めば為替差益を得る機会を失うことになります。一方で、運用会社が機動的に低コストでヘッジをしてくれるのであれば、為替リスクについて必要以上に不安になることなく、外国株式や外国債券に投資する投資信託を利用できるようになるのではないでしょうか。