私は資産運用とは「リスクをコントロールすることによって、少しでも高いリターンを狙う行為」であると考えています。同じリスクであれば、リターンが高い方が、良い資産運用の方法といえますし、同じリターンをより小さなリスクで実現できれば、投資に伴う不安を抑えることができます。

リスクを抑えてリターンを狙うための分散投資

リスクとリターンの関係は、資産によって異なりますが、一般的に高いリターンを狙うには高いリスク(不確実性)が伴います。例えば、株式への投資は将来の価格変動の予想が難しく、不確実性が高いことから、ハイリスクと言えます。一方で、預貯金は金利の変動幅が比較的小さいため、満期時の受け取り金額はほぼ想定どおりです。そのため、確実性が高くリスクは低いと言えるでしょう。

特定の資産におけるリスクとリターンには、ハイリスク・ハイリターン、ローリスク・ローリターンという一般的な関係があります。

資産全体のリスクを抑えるには、リスク・リターンが異なる様々な資産を組み合わせることです。同じような値動きをする資産を組み合わせてもリスクは低下しません。例えば、トヨタの株と日産の株を組み合わせるより、トヨタの株とバイオテクノロジーの会社の株を組み合わせた方が、リスク・リターンは改善する可能性が高いと考えられます。

株式と債券だけのアセットアロケーションの限界

このようにリスクの異なる資産を使う「分散投資」は、伝統的には株式と債券を組み合わせる手法が一般的でした。私も以前は株式型と債券型の投資信託を組み合わせたアセットアロケーションを提唱していました。

しかし、リーマンショックや今回のコロナショックで金融緩和が進み、債券の金利は低下しています。「債券は死んだ」と言う声も聞かれ、期待するほどの定期的なインカム収入は、先進国の国債のような債券からは得られなくなっている状況です。

そこで、私の場合は、不動産に注目しました。価格変動のリスクは債券より大きくなりますが、株式のインデックスファンドに不動産を組み合わせることによって、異なるリスクを持った資産を組み合わせることができ、リターンも期待できると考えたからです。

私自身の資産運用も分散投資という基本は変えずに続けていますが、株式のインデックスファンドに実物不動産を組み合わせる方法に変化しました。

資産運用の「タコツボ化」を見直そう

日本人の資産運用を見ていて思うことは、金融資産を使っている人は金融資産だけ、国内の不動産投資をしている人は国内不動産だけ、FX取引をしている人は短期トレードだけ、というように投資対象を限定してしまい、「タコツボ化」している人が多いように思います。

しかし、冒頭に書いたようにリスク・リターンの異なる資産を組み合わせることこそ、資産全体のリスクをコントロールし、リターンを狙う上で大切なことなのです。

そのためには専門分野の投資を極めるだけではなく、異なる資産を統合(インテグレーション)することも考えるべきではないでしょうか。

そのような観点から、金融資産や不動産だけではなく、更に広く仮想通貨などの新しい投資対象についても、好奇心を持って調べ、自分の資産に取り入れていく方が、成功の可能性が高まると考えています。

自分の投資分野だけにこだわる「食わず嫌い」をやめて、資産運用マーケットの変化に柔軟に対応することが、成功の大きな要因になると思います。自分自身の資産運用が「タコツボ化」していないかを確認してみてください。