6月14日、中国国家統計局は2011年1~5月の不動産販売データを発表しました。1~5月に販売された住宅面積は前年同期比9.1%増の3億2932万平米、販売金額は同18.1%増の1兆8620億元です。そして、同局が発表した5月の「70大中都市住宅販売価格変動状況」によると、4月と比べ、50都市は価格上昇、11都市は横ばい、9都市は価格下降です。北京、上海、広州、深センなどの主要都市の新築価格は小幅な上昇を続けており、値下がりにはまだ至っていません。不動産開発企業の販売価格を見ると、多数の不動産企業の1~5月の販売価格は2010年の平均価格を上回っています。たとえば、中国海外発展(0688)は2010年の平均価格を27%上回っています。富力地産(2777)は19%増、碧桂園(2007)は16%増、恒大地産(3333)は9%増、世茂房地産(0813)は8%増となっています。
このように中国ではインフレが社会問題になり金融引き締め政策をとっているにもかかわらず、不動産価格が上昇している現状があります。しかし下半期には不動産価格の下落が始まるとの予想もあります。6月15日、格付け機関のスタンダード・アンド・プアーズ(S&P)は、向こう6~12ヶ月のうちに、中国の新築住宅の販売価格は10%下がると予測。その理由について、住宅供給が高い水準に留まっていることや、金融引き締め策の持続的実施によって、不動産企業の財政状況が悪化することなどがあげられています。モルガン・スタンレーも2011年第3四半期から発売される物件が増加し、値引き販売の起こる可能性があるため、中国主要都市の不動産価格は下がると予測しています。
政府も高額物件の規制に動いています。2011年5月12日、北京の「釣魚台7号院」という物件が発売されました。このうち、3号棟の販売予定単価が30万元/平米になり、中国本土の住宅のなかで最高単価となってメディアと関連政府部門の注目を集めています。1人民元=12.5円で計算すれば、100平米の部屋は3億7500万円になる計算です。そして、6月17日、北京市住宅建設委員会はプロジェクトの内装工事に違法箇所があるなどの問題点をあげて、「釣魚台7号院」の開発企業である「中赫集団」に約172万元の罰金を科しました。
その後、中赫集団は30万元/平米の3号棟の販売を停止し、自社保有物件として留保することにしています。残りの物件も販売価格を従来の最高20万元/平米から15万元/平米に引き下げるとしています。その他、6月22日にも上海不動産管理局が上海市の販売単価24万元/平米の高額プロジェクトに対し、調査。そして、開発企業に販売価格を引き下げる命令が下されています。
中国のインフレはまだ沈静化されておらず、今後一段の不動産引き締め策が出ることが予想されます。ただ、現在のように不動産価格が上昇している局面では、引き締め策にもかかわらず不動産価格の上昇が止まらないことがままあります。また、中国政府も不動産価格の急上昇は望まないものの、急落を望んでいるわけではありません。地方政府は農地を宅地化して販売し、それが重要な収入源となっているためです。不動産価格が急落すると、地方政府は資金に困窮してしまいます。
したがって、不動産価格もGDP上昇率程度に緩やかに上昇することが中国政府にとって最も望ましい形でしょう。6月24日には中国銀行監督管理委員会が不動産開発企業向けの貸付を削減する要求を銀行に命じることを明らかにしていますが、今後、中国政府は難しい舵取りを迫られていくことになりそうです。