前回、中高級ブランド企業の香港IPOブームが起こっているとお伝えしましたが、高級ブランド企業の中国での業績が大きく伸びる可能性があるニュースが飛び込んできました。もしかすると、このニュースを事前に察知して、国際大手ブランド企業は、この時期に香港上場を目論んだのかもしれません。

2011年6月15日、中国商務部のスポークスマンによると、中国国内の贅沢品消費を拡大するため、中国政府は贅沢品を含む一部商品の輸入関税を引き下げることについて検討しているとのことです。現在、中国の贅沢品の輸入関税はおよそ15%~25%の水準ですが、これが2%~15%まで引き下げられる見通しです。

さしあたり、化粧品、高級タバコ・お酒から先に、引き下げを実施する観測があります。世界贅沢品協会によると、2010年、中国本土の贅沢品市場の消費額は107億米ドルで(プライベートジェット、ヨット、ラグジュアリーカーを含まず)、日本に次ぐ世界2位の贅沢品消費国です。そして、中国の贅沢品消費は2012年に146億米ドルまで拡大し、世界最大の贅沢品消費国になると予測されています。

しかし、別の角度から見ると、中国は既に世界最大の贅沢品消費国であるという見方も出来ます。というのも、前述のように中国本土では贅沢品に対し、高い関税を徴収しているため、中国人は海外で高級ブランド品を購入する傾向があるため、中国人の海外での贅沢品消費額は本土での消費の約4倍の規模があります。

2010年、アジア人の欧州市場での贅沢品消費額は合計で690億米ドルですが、そのうち500億米ドルは中国人による消費です。このように、海外消費を含めると、中国は既に世界最大の贅沢品消費国であると言えるわけです。ところで、中国の贅沢品輸入関税は世界最高です。商務部の調査によると、時計、カバン、服装、お酒、電子製品の5類製品の高級ブランド価格について、中国本土では香港を45%上回っており、米国を51%、フランスを72%上回っています。

そのため、中国人の贅沢品需要は大きく拡大しているものの、国内市場より、最も利益を受けるのは海外市場です。そのうち、香港は中国本土と近く、中国人にとってビザも容易に取得出来るため、最も恩恵を享受しています。それは関連の香港小売企業の業績成長と株価上昇にも表れています。

世界贅沢品協会によると、中国の贅沢品消費人口は約2億人で、年間25%で増加しています。贅沢品消費者の平均月収は2万~5万元です。一般的には、ある国の1人あたりのGDP(国内総生産)は1500米ドルを越えると、贅沢品需要が出始めます。そして、2500米ドルを超えると、贅沢品消費は加速的に成長します。現在、中国の1人当たりのGDPは4000米ドル台に乗っているため、贅沢品消費の爆発的成長段階に入っています。そのため、中国人の贅沢品消費をいかに本土市場に留めるのかに中国政府は注目しており、関税引き下げを検討し始めているわけです。

現在、中国株は全般的に調整局面に入っていますが、中国本土で事業を展開する高級ブランド企業や、ブランド品を取り扱う販売企業の株価が大きく下がったところは、投資を検討する価値があると言えるかもしれません。