最近、倒産のニュースが世界で急増しています。5月まではロックダウンの影響で裁判所が申請を限定していた国が多かったのが、活動再開で一気に表面化しつつあるようです。
なかでもサプライズは、良品計画(7453)の米国連結子会社Muji USの再生手続き(米連邦倒産法11章)申請でした。最高級エリアの五番街に巨大店舗を構えるなど派手な展開が目立っていましたが、新型コロナの顧客減少に勝てなかったようです。良品計画の株価は発表翌日に一時7.7%下落しましたが、その後発表前の水準に戻しました。
このように、米国のみで倒産して日本子会社は無傷というケースはよく目にしますが、その逆は殆どありません。これはなぜでしょうか。
そもそも、日本では、再生しようと頑張る企業へのペナルティが厳しすぎます。2000年代初頭、日本でも、企業の復活を促そうと「民事再生法」が作られました。ところが、その活用はまだ倒産全体の3.4%に過ぎません(2018年度)。それ以外は、すっぱり清算してしまうか、銀行と長期間に亘って返済計画を折衝し、経営者が疲弊していくというほぼ2択で、事業の前向きな再生を後押しできていません。
一方、米国では、倒産件数は年間3.9万件と日本の5倍にも上りますが、そのうち6割が再生型です。「再生」のイメージの違いもありますが、それ以上に重要なのは、再生プロセスが経営者に比較的優しく、次の成長を促すものになっていることです。例えば、個人保証を入れる経営者が自宅や一部の貴金属の差し押さえを免れる州も多く存在します。しかも、倒産後の資金調達に「超優先権」が認められているため、倒産後も資金調達がしやすくなっています。今年2月には中小企業向けの再生法が大幅に緩和され(倒産法11章のV)、中小企業の再起がさらに容易になりました。
こうした再チャレンジ企業への融資はDIPファイナンスと呼ばれ、年率10%以上の金利が取れるため、投資家にとってチャンスでもあります。4月に破綻した米デパートのニーマン・マーカスもDIPファイナンスで660億円程度を調達すると報じられています。今は日本の個人投資家向けの案件は殆どありませんが、もう少し企業の再生が容易なシステムが出来れば、再チャレンジ企業に対してWin-winな支援融資ができるのでは、と思います。まだ抜本的な変更は見えませんが、これから増えていく倒産のその先に注目していきたいと思います。