23年前の今日、香港のハンドオーバー(旧宗主国イギリスから中国への返還)のまさに当日、私は香港にいました。前職ゴールドマンサックスに居た頃で、後にアメリカの財務長官となったハンク・ポールソンらと共に、香港・中国ビジネスに関係する当時のゴールドマンのパートナーらが前日から香港に集まり、前晩に大きなビジネスディナーを催したのです。とても華やかで、香港の将来に対する期待と希望に溢れた興奮がありました。

私は仕事の関係で、7月1日当日は、確か午前中に日本への帰国の途についたのですが、何故か香港の街には不思議な虚しい雰囲気が漂っていたのを、今でも覚えています。それはもしかしたら前晩に飲み過ぎた私の体調の為した技だったのかも知れませんが、23年後の早過ぎる運命の脱輪を予告していたのかも知れません。

香港国家安全法は昨夜遅くに施行されました。昨日日中に、香港の民主化運動を引っ張ってきた或る人の悲痛な叫びが聞こえてきました。「私は、本日をもって、政治団体デモシストから脱退致します。これは重く、しかし、もう避けることができない決定です。絶望の中にあっても、いつもお互いのことを想い、私たちはもっと強く生きなければなりません。生きてさえいれば、希望があります。」数日前には、「日本の皆さん、自由を持っている皆さんがどれくらい幸せなのかをわかってほしい。本当にわかってほしい...」とも書いていました。

本当に重い言葉です。この言葉を私は大切に記憶していきたいと思います。