中国工業・情報部は板ガラスの生産過剰を改善するため、各地方政府に板ガラスの生産容量拡大を抑制することを要請し、2011年に技術の古い生産工場を閉鎖することによって、2600万重量箱(重量箱:中国で用いられる板ガラスの計量単位、約50kgに相当)の板ガラス生産量を削減する計画を出しています。そして、大手企業の合併・買収を促進し、2015年に上位10社メーカーの生産容量をシェア75%まで拡大させる方針です。2008年から、中国の板ガラスはすでに生産過剰となっていました。

しかし、中国の長期的な成長をアテにした板ガラス生産容量拡大の勢いは止まらず、2010年には中国の板ガラスの生産ラインは34本増加し、生産容量は1.3億重量箱も拡大。2010年末時点で、中国の板ガラスの生産容量合計は8.9億重量箱、生産量は6.3億重量箱となっています。さらに、建設中の生産ラインは30数本あり、竣工後は1億重量箱の生産容量が拡大します。供給過剰のため、産業全体の設備稼働率は70%にまで落ち込んでいます。

生産容量抑制策が実施される一方で、中国のガラス需要は拡大しています。ガラス需要の6~7割は建設向けで、残りの3~4割は自動車用ガラスと装飾用ガラスです。2010年から、中国政府は低所得者向けの住宅建設を加速する方針を打ち出しています。低所得者向け住宅は2009年の330万戸から2010年には580万戸に拡大。そして、2011年には約70%増の1000万戸に拡大し、2011年~2015年の5年間で3600万戸を建設する計画です。この大きな建設計画に利益を受けるセクターの1つはガラス業です。新規建設プロジェクトによるガラスへの需要拡大は着工後の12~15ヶ月後に出てくるため、2010年来の低所得者住宅建設の加速は2011年のガラス需要拡大に繋がるはずです。

産業再編の促進策と低所得者住宅の建設拡大に好影響を受け、浙江ガラス(00739)、中国ガラス(3300)、信義ガラス(0868)、洛陽ガラス(1108)などの香港上場のガラス銘柄や、南方ガラス(深センB株上場:200012)、耀華ガラス(上海B株上場:900918)などの本土上場のガラス銘柄は良い影響を受けるのではないでしょうか。政策面の影響の他、例えば、信義ガラスは技術改善による利益率の上昇、及び傘下の太陽光ガラス業務をスピンオフする計画があること、洛陽ガラスは高級ガラス製品の開発計画を発表したことなど、個々の企業ごとに成長市場を背景にした発展計画もあり、その点にも注目できるでしょう。