「ちょっと待ってよ、あなた、私の401k(米の確定拠出年金)の額は前回より増えてるのよ。違う大統領に投票するなんて危険は冒したくないわ。」

「ねえ、あなた、愛してるわ。あなたは今までずっと投資は下手だったけど、トランプ大統領になってから、あなたはアメリカで投資の上手な人の1人になったわね」 

皆さん、この夫婦の会話のようなやり取りって何だと思いますか?
実は、これは米国時間先週土曜日の夕方、オクラホマ州タルサ市で行われた選挙集会におけるトランプ大統領の演説の一部なのです。

オクラホマ州は、1952年から共和党の州であり、今回の同州の州知事とタルサ市の市長も共和党となっており、トランプ大統領が最初の大統領選挙運動のキャンペーンを開始するにはふさわしい町です。

「有難う、オクラホマ!私たちのキャンペーンを始めます!」の言葉から始まった1時間45分にも渡るトランプ大統領の演説は、分かりやすく、下手なドラマより面白く、観客にも受け、時々まるで漫談のようでもあり非常にエンタテ―ニングなものでした。

Fox NewsとCNNの報道の違いから分かること

今回の1時間45分にも渡るトランプ大統領の演説を伝える米国のメディアの対応は極端に違っています。米国で24時間ニュースを放送しているのは、Fox NewsとCNNの二つです。

トランプ大統領のお気に入りと言われているFox Newsは、トランプ大統領の演説を全部生中継、その後のキャスターのコメントも大統領にかなり好意的なトーンです。

その一方で、トランプ大統領に徹底的に嫌われているCNNの対応はというと、演説の生中継は行わず、事前予想より参加者が少なかった事を徹底的に解説し、演説の最中も大統領の演説をアップで写すことはせず、空きが目立つ会場の上の部分を見せる事で参加者が少ない事をあえて強調するような映し方を行っていました。その間に出演するコメンテーターも、大統領の演説についてより、会場のほとんどの参加者がマスクをしておらず、ソーシャル・ディスタンシングが出来ておらず、感染拡大の可能性を批判するといったありさまです。

Fox NewsとCNNの違いは非常に面白く、Fox Newsだけを見るとトランプ大統領はアメリカが世界に誇る偉大な大統領であり、CNNの報道だけ見ると彼はアメリカにとって迷惑なとんでもない大統領のように思ってしまいます。

トランプ大統領が自分に都合の悪い報道をしがちな犬猿の仲のCNNの報道を「フェイクニュース」と否定し、非難し続けるのはこういった理由があります。

「下がったところで株を売ってはいけない」その理由

話をトランプ大統領の株の話に戻りますが、先ほどの「トランプ大統領になってから、あなたはアメリカで投資の上手い人の1人になったわね」の下りですが、トランプ大統領がオチを語っています。「ただ、株を売らなかっただけなんだけどね」と解説しているんです。
トランプ大統領が4年前に大統領選で勝利を掴んだ日から先週末までの間、配当の再投資を含んだS&P500のトータルリターンは59.5%なのです。ただ、今年の3月23日の今回のサイクルの底値で狼狽売りを行っていたとすると、そのリターンは14.6%へと大きく減ってしまうのです。
そこで売らず、今まで我慢して保有していたら59.5%のリターンになっていたのです。

トランプ大統領は数字を使ってここまで説明はしていませんが、その演説の中にも、「下がったところで株を売ってはいけない」という投資の教訓が隠れていたのです。私が機会あることに言っている「Stay Invested」、米国株は売ってはいけないという話に共通します。今回の演説の意味は「売らなかった」ことにより株価の上昇を享受できたということです。

アメリカの株式資産の多くを持っているのは、アメリカ人のトップ数パーセントだと言われていますが、株価の上昇は決して富裕層だけでなく、多くのアメリカ人にとって大切なことなのです。401kに参加しているアメリカ人は1億人を超えているといわれています。米国の株価の上昇は、一般的な多くのアメリカ人の老後に向けての資産形成という意味でとても意味があり、株価の上昇は明らかに現職の大統領にとってプラスに働くはずです。

トランプ大統領は、演説の最中にアドリブで、「1週間戻り、50日さかのぼって見てください。その50日間は(米国の)株式市場の歴史の中で最も強い50日間だったのです」と自慢する発言を行っています。

トランプ大統領の強みは、彼の分かりやすい言葉で話す彼の演説力であり、このような大きな会場では彼の演説に対し支持者が共感し、場が非常に盛り上がるようになっています。トランプ大統領はそれが良くわかっているので、このような直接国民に話しかける方法を好むのです。今まで新型コロナウイルスのせいで、3か月の間大統領にこのような機会が与えられなかったのは彼にとってハンディだったはずです。

11月3日、米大統領選で誰が勝つか

直近のCNBCのアンケ―トでは、バイデン候補の支持率は51%に対し、トランプ大統領は41%です。Fox Newsのアンケートでもバイデン候補の50%に対して、トランプ大統領は38%となっています。

このオクラホマ州での選挙集会は、トランプ大統領にとって、敗者復活戦の始まりですが、まだまだこれから何が起きるか分かりません。4年前の選挙でも、トランプ大統領が本当に選挙に勝つとは最後の最後まで分からなかった訳です。

今年は大統領選の11月3日まで、長い4か月半となりそうです。