S&P500は3月~6月で36%上昇、短期間のV字回復の理由とは

S&P500は先週1週間で4.8%下落、ダウ工業株指数は5.6%下落しました。ナスダック総合は、水曜日に史上最高値を更新したものの、週間ベースでは2.3%下落となりました。

先週(6月8日~6月12日)は久しぶりの調整があったものの、S&P500は今回の下げのサイクルの底を付けた3月23日から6月12日までに36%上昇しています。この短期間のV字型の株価の回復には誰もが首を傾げていました。なぜなら、株価が戻す局面で起きたことはというと、到底株価の上げをサポートするような出来事ではなかったからです。

米国政府は米国経済活動を一時的に停止。米国の国境も封鎖しました。10年間かけて生まれた雇用も数ヶ月で消えてなくなりました。企業業績の方も、第1四半期には前年同期比で17%の減益、第2四半期については40%の減益が予想されるまでになりました。個人投資家の強気指数も弱気層が多い中、到底株価に対して強気になれない環境下で株価が急激に上昇していったのです。このような局目で一体誰が株を買っていたのか。

先週米国で行われたとある金融機関の会議にて登壇した複数の証券会社のマネージメントのスピーチから、その答えが見えてきました。
米オンライン証券のロビンフッドによると、3月の下落した局面で積極的に株を買っていたのはミレニアル世代の投資家だというのです。

ミレニアム世代の投資の特徴

ミレニアル世代とは、1981年から 1996年の間に生まれた世代のことで、今でいうと24歳から39歳の間の若者たちです。今回の新型コロナウイルス対策の為、在宅勤務を余儀なくされたミレニアル世代の若者たちが自宅でネット取引を活発に行うようになったようなのです。政府より配られた1人当たり1,200ドルのコロナ対策の給付金も株式投資に向かった可能性もあります。

ミレニアル世代の投資家たちは、今回の新型コロナウイルスからダメージを受け暴落した業界の株式を積極的に買っていたといいます。
例えば、クルーズ企業のカーニバル・クルーズ(CCL)や、ライドシェアのウーバー(UBER)は典型的な例です。

また、旅行好きのミレニアル世代にとっては、親しみのある航空会社の株が最もトレードし易かった銘柄とのこと。日本のゴールデン・ウィークの最中に行われたバークシャーハサウェイの株主総会でウォーレン・バフェットが航空会社の株式を売却したと発表したことを受け株価が大暴落する中、躊躇せず買っていたのがミレニアル投資家だったようです。では、彼らが何を参考にそのような取引を行ったかというと、YouTubeチャンネルの株式投資情報や米運輸保安局が平日にホームページで発表する空の旅行者数の推移(以下のチャート)のデータポイントを参考に取引を行っていたとのことです。

米国の空港での旅行者数の推移(前年同期比)
出所:米運輸保安局

破産申請を行ったレンタカーのハーツ(HTZ)の株式は価値がなくなるはずですが、その株を投機的に買い上げたのもミレニアル世代の投資家のようです。

このようにミレニアル世代の投資家が株価の暴落後、積極的に株を買っていたのは他の証券会社でも同じだったようです。このところの銘柄のボラティリティを高めたのはミレニアル世代の投資家と言えるのかもしれません。

チャールス・シュワブ証券によると、2019年に入ってから新規口座の開設をした顧客の半分は40歳以下であり、彼らはこれまでの顧客の資産規模より大きな資産で株式の取引を行っているそうです。

今回若者が株式市場で積極的に株式を買っている現象は、12年前の金融危機の際に株式が大きく下落した時には見受けられなかったそうで、ミレニアル世代が、株式市場において株価の形成に影響力を持つ投資家層となりつつあります。他の世代よりリスク・ティカ―である彼らの銘柄の好みを知ることが、米株のリターンを高める方法の一つになるのかもしれません。

米国経済再開の道のりは、なだらかなものではないかもしれませんが、経済が回復に向かっていることは間違いありません。消費者の支出レベルは新型コロナウイルス前の90%まで戻ってきているというエコノミストの意見もあります。

今週火曜日(6月16日)には5月の小売売上高の数字が発表されます。市場のコンセンサス予想は7.4%(前回は-16.4%)、自働車を除く小売売上高のコンセンサス予想は5.5%(前回は-17.2%)となっています。市場の予想を上回るか否か、この数字は経済回復の度合いを考えるうえで大切な、米国の株式市場参加者も注目する経済指標となります。