ヨーロッパはどこへ向かっていくのでしょう?EUは、通貨統合はしましたが、財政統合はしませんでした。EUに中央銀行はあるのですが、EUの財務省はないのです。従って、EUという単位でファイナンスすることが出来ず、何かEU内で経済問題などが起きた時に、財務省なしで中央銀行だけで対応しようとするので、EUとしての統治能力に常に疑問が付いて回りました。

ところが今回、新型コロナウイルスという巨大な問題の前に、EUは極めて大きな一歩を踏み出そうとしています。フランスのマクロン大統領とドイツのメルケル首相が打ち出した、EUとしての5000億ユーロの債券発行の構想です。EU内のドイツやフランスといった優良国の力で借金をし、イタリアやスペインなどの弱い国にお金をあげようというアイデアです。

何百年も様々な形で戦争を続けて来たヨーロッパが、EUという共同体を作ったのは、もちろん複雑で多様な思惑があってのことと思いますが、何世紀もの歴史を乗り越えて共同体を作ろうとの理想がなければ、なし得なかったことでしょう。今のヨーロッパは、新型コロナ問題を契機に、再度この理想に向かうのでしょうか?

一方、共同債券構想の中身を丁寧に見ると、「第3国(third countries)からの戦略セクターに対する投資からプロテクトする産業政策」なるものを要求しています。これだけ読むと、要はイタリアが中国の一帯一路構想から降りないと助けないよ、と云ってるように聞こえ、或いは第3国とは、ロシアやアメリカさえも視野にあるのかも知れません。それで冒頭の言葉、「ヨーロッパはどこへ向かっていくのでしょう?」となったのです。注意深く見る必要がありますね!