アメリカでは、スペースXの新型有人宇宙船・クルードラゴンがISS(国際宇宙ステーション)にドッキングを成功させるという華やかなニュースが、全米に拡がる抗議デモというか暴動のニュースに掻き消されてしまいました。抗議デモは、白人警官が黒人男性を地面に押さえ付けて死に至らしめたことがきっかけになっていますが、その映像と、スペースXやISSの映像は、あまりにも対極にあります。片や視線は地面に向かい、片や視線は空の上に向かいます。見下ろすことと見上げることには、心理的にも違う効果があるのでしょう。

ジョン・F・ケネディは、人種問題を過去のものにし、アメリカ人の目線を宇宙に向けることに努力しました。あの頃のアメリカはどこに行ってしまったのか。然しながら、もしかしたら違う見方も出来るのかも知れません。今回の抗議から暴動への発展、そして州兵の出動などは、1992年のロサンゼルス暴動にとてもよく似ています。あの頃私は債券トレーダーで、アメリカのニュースをライブで見ながらトレーディングをしていたのでよく覚えています。

アメリカではこのような暴動がたまに起きます。略奪などは如何なる理由でも正当化出来ない違法行為ですが、アメリカはこのような或る意味コントロール可能な規模の暴動などを経ながら、国全体がおかしくなっていくことを止める機能があるようにも、見えなくはありません。それが中国やその管理下にある地域や、或いは世界のその他の地域と違うところです。

いずれにしても、早くアメリカの人々が目線を上げて、空を一緒に見るようになって欲しいものです。