このところ株から債券へ資金がシフトして債券価格が上昇傾向(利回りは低下)にありますが、株の世界でも電力、水道、ガスなどの公益銘柄、いわゆるディフェンシブ・ストックに注目が集まってきています。そこで今回は中国の代表的なディフェンシブセクターの1つである高速道路セクターについて見てみたいと思います。ひところは、中国高速道路セクターは中国経済拡大の恩恵を余すところ無く享受出来るセクターとして人気を集めました。しかし、・・・

このところ株から債券へ資金がシフトして債券価格が上昇傾向(利回りは低下)にありますが、株の世界でも電力、水道、ガスなどの公益銘柄、いわゆるディフェンシブ・ストックに注目が集まってきています。そこで今回は中国の代表的なディフェンシブセクターの1つである高速道路セクターについて見てみたいと思います。ひところは、中国高速道路セクターは中国経済拡大の恩恵を余すところ無く享受出来るセクターとして人気を集めました。しかし、中国経済の拡大が本格化した昨今では、消費銘柄などの好景気時に業績拡大ペースの速いセクターに人気がシフトしてしまった印象があります。しかし、中国がインフレ対策に伴い、強めに経済にブレーキをかけ始めた現在、再びその魅力が増してきているように思えます。

2011年4月来、中国の河南、山東などの野菜生産地で、キャベツ、レタスなどの季節野菜が過剰栽培で売れなくなっています。農業生産者たちは投資資金を回収するため、野菜の買い上げ価格を引き下げ、1グラムで0.1元の過去最低価格で売却しています。しかしその一方で、生産地で価格暴落している野菜は都市での販売価格が値下がりしていません。その原因は中国における高い物流コストです。中国の道路通行料が1人当たりのGDPに占める比率は2%超で、これは世界最高水準です。ある試算によると、中国のスーパーマーケットや小売店で販売される野菜の小売価格は生産地の価格の20倍を上回っています。その差額のうち、物流コストは50~70%を占めています。そして、その物流コストのうち、道路通行料は3分の1を占めています。このように中国では伝統的に高速道路料金は高い水準にあります。

高額の道路通行料が道路運営会社の好業績に繋がっています。中国本土A株上場の19社の高速道路会社をチェックすると、2010年、全19社が黒字を計上し、うち14社は業績成長を遂げています。19社の売上合計は前年同期比19%増の339.9億元で、純利益は16%増の120.6億元。そのうち、もっとも利益の出ている高速道路会社は香港にも上場している江蘇高速(00177)、その純利益は25.3億元です。そして、粗利益率を見ると、2009年ベースでは高速道路セクターは中国で粗利益率の最も高い分野で、不動産と金融セクターをも超えています。2010年、高速道路会社の粗利益率は2009年より下がっていますが、それにしても、高い粗利益率を維持している会社が多くあります。香港上場銘柄の粗利益率を見てみると、江蘇高速(00177)が54.7%、安徽高速(00995)が56.1%と、50%を超えている会社があります。

高速道路会社は安定的なキャッシュフローを得られ、負債比率も比較的低い水準です。具体的に、2010年、19社の総資産合計は2049.6億元、負債合計は963.5億元、負債比率は47%です。もちろん中国政府が、物流コストの高い現状を改善するため是正政策を出せば、当然高速道路会社の業績悪化につながりますが、政策面の悪材料が出なければ、高速道路銘柄は良いディフェンシブ株であり続けるでしょう。香港に上場している高速道路銘柄は前述の2社の他に浙江高速(00576)、深セン高速(00548)、四川高速(00107)、越秀交通(01052)などがあります。