経済の再開が進むアメリカと株式市場

今後起きる未来を前向きに織り込もうとする米国株は次から次に発表される今まで見たこともないような最悪な経済指標には目もくれず、米国経済の再開に注目しています。

政府が経済を止めたアメリカでは、5月末までに95%の州が経済の再開を行う事になっています。
ついに、NY州でもクオモ知事が、明日(5月16日)には8つのうち5つの地域で経済の部分的な再開がされる見通しであるということです。現在の米株市場は、経済の再開というポジティブなニュースと、その経済再開がもたらすリスクというネガティブなニュースのヘッドラインに一喜一憂しています。

今週に入りまして、マーケットの下げの原因となったニュースは、国立アレルギー感染症研究所のファウチさんが、「経済活動の時期尚早な再開というのはコロナウイルスの爆発的な感染拡大を再び起こしかねない。」と警告すると、FRB議長のパウエルさんが、「アメリカの経済は新型ウイルスの影響で、高い不透明感と下振れリスクがある」と強調しました。こういった報道に対しマーケットはネガティブな反応を示しました。

その一方、ホワイトハウスは、トランプ大統領は追加的な経済対策を検討したいとい発表すると、マーケットはその発表を好感し上昇しています。

市場のリスクは米中関係の悪化

最近になってVIX(恐怖)指数でみる市場のボラティリティも下がってきていますが、最近再浮上してきました米中関係の悪化は市場のボラティリティを再度高めることになるでしょう。

今となっては信じられないような話ですが、今年の1月時点の米国経済を思い起こしてみますと、当時は米国では50年来の低失業率に加え、株価も史上最高値を更新に向かっていました。また、トランプ大統領にしてみると、次の大統領の椅子も自分のものになるだろうと思っていたところ、今回の中国発のコロナウイルス感染のせいで、あっという間に世の中がガラッと変わってしまった訳です。

当然、トランプ大統領の中国に対する怒りは非常に強い訳で、選挙のキャンペーン的なレトリックもあるのだとは思いますが、中国に対するツイッターであるとか、声明には市場を大きく動かす力があり、注意が必要です。

プロの投資家が「思いっきり市場に負けているという恐怖感」

ウォール街の調査によると、2020年4月の1ヶ月間で大型株のファンド・マネージャーの66%が、ベンチマークに負けているというデータがあります。

実際、アメリカのマーケットでは最近FOMUという略語が使われるようになっています。

FOMUとは Fear of Meaningfully Underperformの略です。「思いっきり市場に負けているという恐怖」というような意味ですが、今のマーケットで、数多くのファンド・マネージャーがベンチマークに負けているという実態を的確に表現しています。

ファンド・マネージャーがベンチマークより高いリターンをあげられていない理由の一つは、FANGに代表される大型グローバル企業の目を見張る上昇ぶりです。

やっぱりFANG銘柄が市場を牽引

年初から5月13日まで間、S&P500は11%下落しましたが、同期間FANG銘柄は平均で16%上昇しています。明らかにFANG(※)のような銘柄を持っていないファンドですと、マーケットの上げについていけない訳です。

【図表】S&P500、Nasdaq総合、FANG銘柄の今年のパフォーマンス
出所:マネックス証券作成

FANG4銘柄の2020年のEPS予想は、前年同期比で17%の増益、対するS&P500は17%の減益の見通しとなっていまして、2021年もFANG銘柄は38%の増益予想に対し、S&P500は29%の増益となっており、9ポイントほど高い成長率が期待されています。

近年FANG銘柄に対しては批判的な意見も出ていましたが、やはり、成長力の高いFANG銘柄の株価は、下落の局面でもそれほど下がらず、上昇の局面ではいち早く回復し、FANG銘柄の偉大さを再確認することになりました。

今後の見通しを考えた場合、ローテーション的にFANG銘柄をアウトパフォームしてくる局面もあるとは思いますが、引き続きFANG銘柄は長期的に米国株式市場を牽引していくことになると思います。

(※)FANG:フェイスブック(FB)、アマゾン(AMZN)、ネットフリックス(NFLX)、グーグル(GOOGL,GOOG)の4社のこと。(グーグルは、親会社のアルファベット(GOOGL、GOOG)が上場。)