「セル・イン・メイ」と米国債の大量償還

金融市場には、「アノマリー」という言葉がある。論理的に説明するのは難しいものの、繰り返されるパターンという意味だ。そんな「アノマリー」の5月の代表といえば「セル・イン・メイ」だろう。5月になったら、株は売って「go away(逃げ出せ)!」。

2013年5月に、当時のバーナンキFRB議長の発言をきっかけに株価が急落するといったことがあったが、これなどは「セル・イン・メイ」の影響が出た代表例の1つだったのではないか。

ところで、為替市場においてこの5月も含めた四半期に一度、「アノマリー」的に注目されることがある。米国債の四半期償還の影響だ。四半期ごとの15日を目途とした米国債の大量償還を米国にとっての外国が再投資せず、国内に還流させると大量の米ドル売りをもたらす可能性がある。

たとえば1997年5月、1米ドル=120円台半ばでスタートした米ドル/円は、中旬にかけて110円台半ばへ大きく下落(円高)した。これは、当時マーケットに最も影響力のあった、「インフルエンサー」とされたある大蔵省(現財務省)幹部の発言をきっかけに円高が大きく進むところとなったものだったが、根底には上述の米国債償還の影響があったのではないか。

さて、今回紹介した2つの5月アノマリー。この2つは、ともに株安、円高を示唆するものだ。では、そういった中で、3月下旬以降の「コロナ・ショック」の株暴落修正の動きが転換点を迎えることになるか、引き続き注目してみたい。