ウォーレン・バフェット率いるバークシャー・ハサウェイの株主総会:オンライン開催

ゴールデンウィークの日曜日の日本時間の早朝、最強の投資家と呼ばれているウォーレン・バフェット率いるバークシャー・ハサウェイ(BRK)の株主総会が開催されました。

世界で一番有名な株主総会であるバークシャー・ハサウェイの株主総会は、毎年この時期にアメリカはネブラスカ州オマハで行われ、世界中から毎年4万人のバフェット・ファンの株主が集まると言われています。オマハの人口は約47万人という事ですから、この時期オマハの人口は9%程度増えることになりまして、その間はオマハ中のホテルの部屋が完売という状況となります。

あいにく2020年につきましては、新型コロナウイルスの影響で株主が集まる通常の形の株主総会は開かれず、Yahoo.comにて世界中でライブストリーミングされることになりました。今回の株主総会のキャンセルによるオマハの町にとっての経済的な被害は、23億円相当にもなるそうで、バークシャー・ハサウェイの株主総会は、このアメリカの一地方都市にとっても大切なイベントだということです。

マネクリでは、バークシャー・ハサウェイの株主総会の様子を2回に分けてご紹介したいと思います。
実は、私も今回オマハで行われます株主総会に参加する予定だったのですが、いつもの形の株主総会がキャンセルとなった為、ストリーミングでの参加となりました。

いつもですと、会長兼CEOのバフェットさんの横には副会長のチャールズ・マンガーさんが座り、二人がお話をされるのですが、マンガーさんはロサンゼルスに住んでいる為、今回は参加せず、代わりにバークシャーの非保険部門の副会長のグレッグ・エイベルさんがマンガーさんの代理で出席していました。

この株主総会は、日本時間、日曜日の朝5時45分から始まったのですが、終わったのは10時14分でした。つまりバフェットさんは、4時間30分の間、ほぼ一人で、しゃべり続けました。 

皆さんは、バフェットさんの年齢はご存じでしょうか。バフェットさんは、今年の8月になんと90歳になります。私は、この株主総会の4時間半の間、ノートを取りながらバフェットさんの話を、真剣に聞いていたのですが、終わったころにはもうぐったりになりました。そうしましたら、今回のYahooのライブ放送にコメンテーターとして出演していたアメリカ人も、4時間半の株主総会が終わった後、感想を聞かれると開口一番、「私はとても疲れた」と、私と同じことを言っており、ウォーレン・バフェットという人は、89歳の年で、体力的にもメンタル的にも、とてもタフな人だと思いました。

世界中の投資家がバークシャー・ハサウェイの株主総会に注目している理由

まず、そもそも、なぜバークシャー・ハサウェイの株主総会が世界中の投資家から注目を得ているかということですが、一言で言いますと、短期的な株価の乱高下は別として、バークシャーが長期的に市場のリターンを上回っていることがあげられます。1976年から今まで、S&P500のリターンは、年率10%だったのですが、バークシャーの株価はといいますと、そのほぼ倍の21%のリターンを出しています。バフェットさんは、バークシャーのCEO兼会長であると同時にバークシャーの筆頭株主でもあります。彼の資産は700億ドル、約7.5兆円で、アメリカで4番目のお金持ちだと言われています。7.5兆円とは、KDDIを買って2000億円のおつりがきて、三井住友FGを二回買えるくらいの金額です。

そんなお金持ちのバフェットさんですが、とても質素な生活をしていることで有名です。バフェットさんの家ですが、オマハの静かな住宅街にありまして、バフェットさんはこの家を1958年に31,500ドルで買ったと言われていますが、現在の価値は652,619ドルなのだそうです。約21倍です。インフレは考慮に入っていませんが、62年間で約21倍になっています。オマハは米国の地方都市です、東京都内の家とは違います。日本の地方都市であればここまで上がっていないのではないでしょうか。

バフェットが考える、アフターコロナ後のアメリカ

今回は、バフェットさんの講演の部分のご紹介をしたいと思います。

壇上のバフェットさんの右には、コカ・コーラの缶とコップが置いてあります。バークシャーは、コカ・コーラ(KO)の筆頭株主となっていまして、発行済み株式の9.32%を保有しています。

バフェットさんは最初に突然、「自分は大学では会計学は良くできたのだが、生物はまったくだめだった」と前置きをしまして、ある人について絶賛し始めました。その人とは、ホワイトハウス、ヘルスアドバイザーである米国立アレルギー感染症研究所(NIAID)のアンソニー・ファウチ所長です。この方は毎日のようにホワイトハウスのブリーフィングで、米国における新型コロナウイルス感染についての説明を上手にされており、アメリカでは時の人となった方です。バフェットさんは、ファウチ所長をDrファウチとして紹介し、「彼が私や、アメリカ国民に対し、新型コロナウイルス感染症の進展を説明してくれていることに対して、とても感謝している」と話していまして、彼のようにこの問題に関して、ユーモアを持って、ストレートな話し方をする人がいることをアメリカは「非常に幸せである」とDrファウチの事を褒めたたえていました。

次に、バフェットさんによるアメリカの歴史の話に移ります。いい意味で、大学の教授の講義をされているようでした。アメリカ合衆国は建国から231年過ぎており、年齢で言うと231歳。バフェットさんとマンガーさんの二人の年齢を足しても185歳で、アメリカの方が自分たちよりも歳がいっていると、ユーモアのセンスを見せることを忘れません。

1790年当時のアメリカの人口は390万人、今の80分の1位ですね。その390万人のうち60万人が奴隷だったと説明します。地球の人口の0.5%が当時のアメリカ、当時は13の州しかなかったのですが、その13の州に住んでいたそうです。1789年当時のアメリカの富、これはバフェットさんの試算だと10億ドル相当だったのが、2020年のアメリカの富は100兆ドルを優に超えたと言います。1ドルが10万ドル、つまり、10万倍になっており、インフレ等を考慮すると5000倍へ。ただ、その成長も一直線で伸びてきた訳ではなく、アメリカはその間色々な苦難を乗り越えて偉大な国になってきたのだと言います。1861年には、アメリカには1600万人の男性がいましたが、そのうち1000万人は、18歳から60歳までの年齢で、そのうち6%のアメリカ人の男性が南北戦争(1861年~1865年)で命を亡くしたのだと言います。

今に例えますと、18から60歳までの男性が400万人亡くなったのと同じくらいのものだと言います。

その後アメリカは様々な悪い時代も経験したものの、今やNYダウは24,000ドルを超えており、2020年は1789年当時と比べると、「incredible」 という表現を使っていましたが、素晴らしい、信じられない、びっくりするという意味であり、まだ問題はあるものの、アメリカは素晴らしい国であり、とても豊かな国になったと説明しています。

バフェットさんは、今のアメリカ経済についても触れましたが、新型コロナウイルスの影響で目先のアメリカ経済の行方はレンジの幅が大きい、要はどのくらい景気が悪くなるか想像もつかないという事を言っています。

ただ、長期的には、アメリカはいかなる危機も乗り越えると断言しています。
彼の表現は「基本的にアメリカ(の成長)を止められるのは誰もいない」と言い、「Never bet against America」と、アメリカに「反対」して賭けることをしてはならないと力説します。

バフェットがおすすめする投資の考え方

これは、バフェットさんの以前からの持論ですが、「彼はほとんどの人にとっては、他人のアドバイスで、株を買うくらいなら、S&P500のインデックスファンドを買うべきだ」と力説していました。その理由は、「個別銘柄に投資をするアドバイスのために多くの手数料を払っていることが無駄だから」ということです。アメリカの将来を信じ、S&P500に投資をする方が、債券投資、また手数料を払って他人のアドバイスに基づいて個別銘柄を買うよりもずっと良いのだと力説していました。加えて、借金をして株の投資をしてはならないとも言っています。

バフェットさんは、アメリカ中央銀行であるFRBの総裁のパウエルさんの事も高く評価をしていました。それは、今年の3月、金融市場がカオスな状況の際、惜しみなく流動性を提供した際、非常にスピーディ且つ、強い決意を持って行動を取り、金融市場を救ってくれたことをベタ褒めしています。

では、次回は、バフェットさんによる質疑応答の模様をお伝えしたいと思います。