初心者が投資を始めるにあたっての注意点やアドバイスをマネクリ編集部が投資のプロにたずねました。今回は、初心者が株を始める際の心構えや投資先についてファンドマネージャーの石原 順氏にQ&A形式で回答してもらいました。
このコロナショックのタイミングで初心者が投資をはじめる場合に、注意しておいたほうがよい点や心構えがあれば教えてください。
値ごろ感で投資しないことです。株価が大きく下げたからといって、そこで下げ止まると安易に思うのは間違いで、さらに下落することはざらにあります。
株価が下がりきったポイントで買いたいと思うのは投資家心理でしょうが、実際に大底を捉えることはほぼ不可能です。危機が起きればどのセクターもどの銘柄も決して安全とは言えません。危機の時こそ、ウォーレン・バフェットのような長期的視点が必要です。
ご自身が初めて投資を始めた時期はどんな状況下でしたか。
運用の世界に入って、1年目で1987年のブラックマンデーに遭遇しました。そのときは何が起こっているのかまったくわかりませんでした。市場というのは不条理な世界で、精神論で立ち向かっても手に負えない世界だと思いました。
過去ご経験された暴落相場ではどのような対処をしましたか。
損切りです。私の尊敬する運用者ポール・チューダー・ジョーンズは、「もし損の出ているポジションを持っていて不快なら、答えは簡単だ。手仕舞うだけだ。いつでも相場に戻ってこられるのだから。新鮮な気持ちでスタートを切るのに勝るものはない」と言っています。
これから、初心者が米国株式投資を始めるならどのようなもの(業種や方法など)がよいと思いますか。
個人的な意見で言うと潤沢なキャッシュフローをもつ企業です。サンプル例で銘柄を言うと、アマゾンのような企業です。オマハの賢人と呼ばれるウォーレン・バフェットに「アマゾン株を買わなかったのは愚かだった」と言わしめたアマゾンですが、その強さの源泉は潤沢なキャッシュフローです。
保険業で保険料を徴収し、払い戻しが生じるまでコストがゼロの資金を運用し利益につなげるというビジネスモデルを展開しているバフェットのバークシャー・ハサウェイと同様、アマゾンの強みもこのコスト・ゼロの資金にあります。
初心者が投資対象を考えるにあたっては何を重視するべきだと考えますか。また、そう考える理由を教えてください。
CF(キャッシュフロー)の推移です。フリーCFは、営業CFから事業拡大に必要な設備投資などの投資を差し引いたもので、会社が自由に使うことができる資金です。企業が存続するためには常に変わり続け、自ら未来を創り出していくことが重要ですが、潤沢なキャッシュを持っていない会社はそれができません。フリーCFが潤沢な企業であれば、今後の成長も見込めると考えられます。
投資初心者に「今、してはいけないこと」をアドバイスするとしたら?
余裕資金で運用することが前提で、バイアンドホールド的な長期投資であってもストップロス注文を置かない投資をしてはいけません。私は30年あまり投資の世界にいますが、ストップロス注文(「ある値段まで下がったら売る」という逆指値と呼ばれる注文方法)を置かない運用者で生き延びた人を一人も知りません。
あとは、自分のポジションのコスト(取得価格)などいっさい気にしないことです。相場がこの先上がるのか下がるのかだけを考え、下落すると思ったらあっさり売ってしまう。ためらわないことが重要です。相場は待ってくれませんから。
その他初心者投資家へのエールがありましたらお願いします。
投資家にとって一番大切なのは防御です。大きな下げに巻き込まれないこと、これに尽きます。勉強もしないで参加すれば丸裸にされてしまうのが相場です。大きな損失を出せば、取り戻すのに10年20年と貴重な年月を要するでしょう。
基礎があるから家が建ちます。医師になるには、医学部・インターンと最低8年はかかります。生き馬の目を抜く相場で、長期的に収益をあげることもそれと同じ。防御をしっかりと張り基礎を築くために勉強を怠らないことが、投資の世界で生き延びる術です。