今回は現在iDeCo(個人型)に加入している方が、転職によって企業型確定拠出年金(以下「企業型DC」)を導入している会社に入社した場合にどうすればよいか、について解説します。企業型DCはすでに3万社以上の民間企業が導入しており、サラリーマンの5人に1人はその加入者というレベルで普及していますので、転職先に企業型DCがあり加入資格を得る方は多いと思います。

iDeCo(個人型確定拠出年金)と企業型DC(確定拠出年金)の特徴とメリット・デメリット

まずはiDeCo(個人型)と企業型DCの特徴をおさえておきましょう

【図表】iDeCo(個人型)と企業型DCの違い
(※1)勤務先が企業型DCを導入している場合は原則iDeCoへの加入はできない。勤務先がiDeCoと同時加入を認めている場合のみ加入可能 (※2)自営業者は6.8万円、公務員は1.2万円、3号被保険者は2.3万円 
出所:筆者作成

企業型確定拠出年金のメリット

企業型DCは会社の年金制度ですから、掛金と口座料を会社が負担する点が大きな特長です。企業型DCに加入できるのであれば、転職先の企業型DCに加入するのが基本です。

企業型確定拠出年金デメリット

・企業型DCに加入する場合、加入者向けサービスを委託する金融機関や運用対象となる商品はあらかじめ決められており、その中から自分で選びます。
・会社が出す掛金は給与の一部を退職後に受け取る年金の原資として積み立てるイメージなので金額を自分で決めることはできません。ただし、本人が追加拠出できる仕組み(「マッチング」といいます)がある会社も多く、それを利用する場合は自分で掛金額を上乗せできます。

転職時のiDeCo(イデコ)→企業型DCへの具体的な手続きについて

企業型DCとiDeCoを同時加入できる場合

企業型DCのある会社に転職したときに何をすべきか。企業型DCのある会社に転職した際には、まず会社から入社手続き等と一緒に行われる企業型DCについての説明を受けてください(※)。

その際に確認すべきポイントは、会社の企業型DCがiDeCoと同時加入できるか、つまり、今のiDeCoの積み立てをそのまま継続できるかどうかという点です。自分が会社から掛け金としていくらもらえるか、に関心が行きがちですが、iDeCoを従来通り続けられるかによって、選択できる方法が大きく異なってきます。

企業型DCとiDeCoを同時加入できるのであれば、企業型DCには会社掛金を積み立て、iDeCoに自分で掛金を積み立てしていくことによって、ダブルで老後資金作りができます。この場合、iDeCoの契約先には契約情報の更新が必要となりますから、前回のコラム「転職する時、iDeCo(イデコ)の手続きはどうなる?【個人型から個人型へ】」を参考に手続きを行ってください。

企業型DCとiDeCoを同時加入できない場合

残りの運用期間が短い方以外は企業型DCへの移換が一般的

同時加入できない企業に転職する方は、iDeCoの加入者としての資格を失うため企業型DCのみの加入者となります。今後の掛け金は企業型DCのみで積み上げていくことになるので、これまでiDeCoで貯めてきた資産についてはiDeCoの口座においてそのまま運用を継続するか、企業型DCで新たに作られる口座に持ち込むかを選択します。

iDeCoにおいておく場合、引き続き口座管理料は徴収されます。運用は継続されますので運用益は期待できるかもしれませんが、管理料分だけは毎年年金資産が目減りしていくことになります。ですから、企業型の商品ラインナップにどうしても自分が投資したいと思える商品がないか、受け取りができる60歳が近く据え置き運用する期間が短い方以外はiDeCoに積みあがっている年金資産は企業型DCへ移すのが一般的です。

移換時にマーケットの影響を受けたくない場合は、事前に定期預金への配分変更を

iDeCoから企業型へ資産を持ち運びする際には、iDeCoで保有している金融商品はすべて売却され、いったん現金化されます。売却は事務的に行われますので、マーケットの影響を受けたくない場合にはあらかじめ自分で売却し定期預金など価格変動の影響を受けないような商品にしておくとよいでしょう。

現金となった資産は転職先の企業型DCに設けられた口座に持ち込まれます。しかし、持ち込まれた資産は現金のまま企業型DCの口座に置いておくことはできません。あらかじめ、または資産が移った後に、企業型DCで提示されている商品ラインナップのどれにどれだけ振り分けて運用するか、指示をすることになります。

その指示に従って運用商品の購入がなされ持ち運びは完了です。この事務処理はすべて契約先の金融機関等が担ってくれますし、持ち運び手続きに費用はかかりません。

iDeCo→企業型DCへの移換の3ステップ

【1】新しい勤務先に「これまでiDeCoに入っていた」ことを伝える

【2】新しい勤務先から「資産移換依頼書」(場合によっては「配分指定書(移換用)」という手続き書類を受け取る。

【3】「資産移換依頼書」に移換元のiDeCoの資産管理をしている会社名等を記入、「配分指定書(移換用)」にどの商品で運用するか割合を記入して勤務先に提出する

あとは移換元と受け入れ先でやり取りが行われ、企業型DCの口座に資産を移す処理が進められます。1ヶ月ほどたって手続きが完了すると書面による通知がご自宅に届きます。新しい勤務先には、過去にiDeCoに入っていたという事実は知られますが、年金資産がいくらあったかというような情報は決して伝わりませんのでご安心ください。

今後、企業型DCとiDeCoの同時加入が可能に!

数年後はほとんどの方が企業型DCとiDeCoの同時加入ができる見込みです。2020年現在、企業型DC制度にかかわらず、ほとんどの方が企業型DCとiDeCoの同時加入ができるようにするDC法の改正案が通常国会に提出されています。国会で法改正が成立すれば一部を除いて2022年4月に施行される予定です。

現在、iDeCoで年金資産を保有しており、転職先(就職先)に企業型DCがある人が企業型DCと現在のiDeCoの口座を使ったダブルでの積み立てを希望する場合、数年後の施行まで年間1,000円弱の口座料の負担も厭わないのであれば、iDeCoにある年金資産をそのままにしておくというのは一考に値します。

というのもiDeCoの商品やサービスのコストは金融機関同士の競争によってこの3年で大幅に下がり、さらにサービスも切磋琢磨されて相当よくなってきているからです。持ち運びに手数料は発生しませんが、保有商品の売却・企業型での運用商品の購入にはマーケットリスクが伴います。

もし、現在のiDeCoの商品やサービスが非常に気に入っているのであれば、iDeCoにある残高をそのまま据え置いておくことも視野に入れて検討し、手続きを進めてください。

(※)DC法の改正が成立されれば、今後企業型DCとiDeCoは同時加入できるようになる予定です。

本記事は公開日の2020年5月2日時点の情報となります。