黒田緩和の円安パターン
日銀が来週予定の金融政策決定会合で、国債購入を無制限で行うなどの追加緩和を決める見通しと一部で報道され、23日の海外市場で一時円安に振れる場面があった。ただすでに、FRBも実質的に無制限で国債を購入するなどの強力な金融緩和策を決定している中では、円安をもたらす影響は限られる可能性が高いのではないか。
黒田氏が日銀総裁に就任した2013年以降、本格的な金融緩和は大幅な円安をもたらすケースが目立っていた(図表参照)。2013年4月の黒田緩和第一弾、2014年10月の同第二弾では、金融緩和決定の当日、米ドル/円は約3円、その後の一カ月程度で約10円の米ドル高・円安となった。
【図表】米ドル/円の月足チャートの推移(2006~2016年)
一方で、このような本格的な金融緩和が大幅な通貨安をもたらしたのは米国も同様だった。2009年3月からFRBが量的緩和(QE)を実施すると、米ドル/円は100円程度から75円まで大幅な米ドル安・円高となった。
以上を見ると、米ドル/円は、FRBがQEを実施すると大幅な米ドル安になり、黒田緩和で日銀が本格的な金融緩和を行うと大幅な円安になるといった具合に、日米それぞれの本格的緩和に伴う通貨安合戦のような構図が展開してきたともいえる。
現在は、新型コロナウイルス問題を受けた経済危機への対応で、日米ともに金融緩和の本格的実施を余儀なくされている。このような状況では、これまでのように日銀の本格的金融緩和が円安をもたらす可能性には限界があるのではないか。