4月の香港訪問では製薬会社にも訪問してきました。製薬セクターの株価は全般的に2010年末から、中国政府が薬品価格の引き下げを実施したため、調整基調となっています。

中国政府は2010年12月と2011年3月に2回に渡り、薬品価格の値下げをしました。もちろん、対象となった医薬品を持つ製薬会社にとって、業績はマイナスですが、多くの上場企業にとって軽微な影響でしかありません。今回訪問した製薬会社でも、確かに業績がマイナスとなった企業も、最終製品の価格が3~5%下がった程度である上、中間体と原料薬部門には影響がなく、利益に対するインパクトは微々たるものであるとのこと。反対に、価格が下がった分、今後は販売が伸びる可能性も期待できるということです。そして、既に2回値下げしたので、今のところ、追加で値下げされる可能性は低いと見ています。

また、この値下げは中国政府が進めている医薬改革の一環なのですが、プラス面にも注目できます。2009年から、中国政府は医薬産業への投資を拡大し続けており、2011年の投資予算が1000億元増の5360億元に拡大されました。中国国家発展改革委員会の3月23日の発表によると、2011年の中国医薬産業の総生産高は前年比24%増の1.55兆元となる見込みです。

1998年から2010年、中国医薬産業の年間成長率は20%以上です。今後も22%~25%の成長が続くと予測されています。例えば、製薬メーカーの2010年の業績を見ると、四環医薬(0460)の売上は前年比46%増の10.4億元、純利益は同60%増の5.2億元です。経営陣は2011年通期も高成長を続けられると予測しています。聯邦製薬(3933)の売上は同40%増の65億元、純利益は同80%増の9.7億元です。同社は2009年に稼働を開始した内モンゴルの新工場の貢献が大幅増収増益につながったのですが、今後も生産容量を拡大し続ける計画です。薬品流通会社を見ると、同分野最大手の国薬控股(1099)の2010年売上は同32%増の692.3億元、純利益は同25%増の12.1億元です。ちなみに、中国は2020年に世界2位の薬品流通市場になり、市場規模は1095億元に拡大すると予測されています。

2011年に医薬セクターが再び注目されると予測するアナリストもいます。業界において、製薬、医薬流通、医薬アウトソーシングの3分野では、買収のチャンスが多いとされています。現在、中国薬品生産の分野において、GMP(医薬品製造と品質管理に関する国際基準)を満たす製薬会社が4000社あります。そして流通分野においては、薬品の卸売業者が1万社、薬品物流業者が1.3万社、薬品小売業者が10万数社もあります。今後、産業再編が進めば、大手医薬企業の更なるシェア拡大が期待でき、優良な医薬銘柄の株価が長期的によいパフォーマンスとなることが期待できます。また、近く予定されている医薬品流通大手の上海医薬の香港市場上場によって、医薬セクター全体の注目度が高まる可能性もあります。ここまでに書いてきた以外に山東羅欣薬業(8058)、東瑞製薬(2348)、利君国際(2005)、神威薬業(2877)など数多くの製薬会社が香港に上場しています。