新型コロナウイルスが米国経済に深刻な打撃:米国の新規失業保険申請件数、1か月で合計2200万件

S&P500は先週1週間で3%上げ、2874.56で終わりました。2週間連続の上昇です。
先週の新規失業保険申請件数は525万件と、ここ1ヵ月での申請件数は合計2200万件となり、過去10年間で創出した雇用が1ヵ月で消失したことになります。小売売上高も前月比で過去最大の落ち込みを記録、住宅着工件数も1984年以来の落ち込みを示すなど、新型コロナウイルスが米国経済に深刻な打撃を与えていることが確認された1週間となりました。

そのような深刻なマクロ指標が発表される一方、先週金曜日にはギリアド・サイエンシーズ(NASDAQ: GILD)の抗ウイルス治験薬レムデシビルが投与されている患者のグループに「発熱や呼吸器官症状の急回復が見られている」とのニュースに加え、米国では早くも経済再開に対する期待感が浮上、この日は1日で2.7%上昇しました。

S&P500指数は、4月に入り3週間で11.2%上昇、また、現時点で2月19日の史上最高値からは15.1%の下げ、年初からは11%の下げとなっています。

市場全体のボラティリティは低下したが、個別銘柄のボラティリティは引き続き高レベル

VIX指数でみる市場全体のボラティリティは低下していますが、株式市場のなかでの個別銘柄のボラティリティは引き続き高いレベルにあります。

例えば、バンク・オブ・アメリカ(NYSE: BAC)の株価は4月15日の引け前に発表された予想を下回った決算発表を受けて2日間で9.7%下落した翌日の4月17日には、米経済再開の期待感で8.7%と大きくリバウンドしました。

4月16日木曜日に8%株価が下落したボーイング(NYSE: BA)は、金曜日には新型コロナウイルスの影響で3月から休止していた商業機の生産を来週にも段階的に再開するとの発表を受け14.7%と大幅に上昇しています。
このように個別銘柄は、ニュースフローや、マーケットのセンチメントに反応し、株価は乱高下する展開となっています。

市場の注目は第1四半期の決算発表へ

先週から米国では第一四半期の決算発表が本格化しました。
4月18日の段階でS&P500指数採用銘柄のうち47社が決算発表を終えています。
前年同期比では売上は2.3%の伸びですが、収益は30.1%の減益となっています。2018年第1四半期から毎回平均4%事前予想を上回ってきたのですが、今回は事前予想を12%下回っているというのが現状です。

今後の企業収益にも下方修正がおきる

株式市場の動きとは裏腹に、企業業績の予想は毎週悪化しています。
私は毎週土曜日の早朝、更新された米国企業の収益予想の見通しのデータを確認するのですが、今回の発表では先週に続き急激な下方修正が起きています。

【図表1】S&P500指数予想EPS変化率の推移
出所:Bloombergよりマネックス証券作成

第1四半期に先週の11.2%の減益(全同期比)から、16.5%の減益へと下方修正。第2四半期についても22.6%の減益が31.7%へ、第3四半期は9.8%の減益が16.6%へ、第4四半期は1.2%の減益が6.6%の減益へと下方修正されています。 2021年に入りますと、第1四半期の収益予想は先週の15.4%が18%へと増益に変わり、第2四半期は33.2%の増益が、なんと45.1%の増益へと変わる見通しとなっています。

第2四半期が今回のサイクルで最も収益の落ち込みが激しく、その後徐々に回復していくというトレンドは先週と変わりません。現時点で新型コロナウイルスの感染状況、米国経済、企業業績など、まだ余りにも多くの不確定要因があるため、今後の予想を立てるのは至難の業です。

今回の調整局面における最後の買い場

ただ、前からお話させていただいていますが、株価は収益が改善する前に上昇するという傾向があります。
今回の最悪の第2四半期の決算発表が行われるのが7月の半ばです。第2四半期の後、徐々に企業業績が改善してくるというシナリオが崩れないのであれば、株価はそれまでに最悪のシナリオを織り込む展開になるのではないかと思います。そうしますと、今回の調整局面における最後の買場はその7月までの間ではないかと考えます。

このシナリオを大きく変えるものとして、既に新型コロナウイルスがピークを付けた中国、欧州等の国々の経済活動再開のタイミングについての進展があると思います。米国でも既に経済再開に向けて対策が検討され始めており、このシナリオがどう変わっていくのか要注意です。

今後5月後半までの数週間の間の市場は、米国経済再開のポジティブ(またはネガティブ)な展開に関わるニュースフローと、今回の第1四半期の決算発表や今後のガイダンス発表に一喜一憂する引き続きボラティリティの高いマーケットが続くことでしょう。

4月20日週の決算発表予定

今週はS&P500指数採用銘柄のうち83社が決算発表を行う予定です。同指数の主要銘柄の決算発表のスケジュールと予想一株利益(EPS)は以下の通りです。

EPSコンセンサス予想vs 前年同期実績で記載(出所:Bloomberg)。

4月20日(月)

IBM(NYSE:IBM) 1.82ドル vs 2.25ドル (寄り前)

4月21日(火)

ロッキード・マーチン(NYSE:LMT)5.79ドル vs 5.99ドル
チポトレ・メキシカン・グリル(NYSE:CMG) 2.74ドル vs 3.4ドル    (5時10分)
ネットフリックス(NASDAQ:NFLX)1.64ドル vs 0.76ドル    (寄り前)
コカ・コーラ(NYSE:KO)0.44ドル vs 0.48ドル (引け後)
フィリップ・モリス・インターナショナル(NYSE:PM)    1.13ドル vs 1.09ドル (22時)

4月22日(水)

デルタ航空 (NYSE:DAL)    0.93ドル vs 0.96ドル
AT&T(NYSE:T) 0.84ドル vs 0.86ドル    (引け後)
ナスダック(NASDAQ:NDAQ) 1.47ドル vs 1.22ドル    (20時)

4月23日(木)

インテル(NASDAQ:INTC) 1.28ドル vs 0.89ドル    (寄り前)
ユニオン・パシフィック(NYSE:UNP) 1.92ドル vs 1.93ドル     (引け後)

4月24日(金)

アメリカン・エキスプレス(NYSE:AXP) 1.63ドル vs 2.01ドル
ベライゾン・コミュニケーションズ(NYSE:VZ) 1.22ドル vs 1.20ドル    (20時30分)

※決算発表につきましては、あくまで決算発表予定であり、変更となる場合ありますのでご注意ください。